俺の妹がこんなに可愛いわけがない(2) 発売記念インタビュー -前編-

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俺の妹がこんなに可愛いわけがない(2) [著・伏見つかさ イラスト・かんざきひろ 電撃文庫] |
#ネタバレ注意
このインタビューでは、俺の妹がこんなに可愛いわけがない(2)(以下、『俺の妹』)に関する重大な内容について触れております。『俺の妹(2)』読了後にお読みいただくことを推奨します。
■第二巻はこうしてスタート 「人生相談、まだあるから」by 高坂桐乃
かーず:第二巻の発売、おめでとうございます!
非常に反響の大きかった『俺の妹』の続編ということで、プレッシャーは感じましたか?
伏見つかさ先生(以下、伏見):ありがとうございます。いやーもう、プレッシャーは凄い感じてますね。ただ実際に第二巻の草稿を書いていたのは第一巻の発売前だったので、その時の不安は、まず第一巻が読者の皆さんに受けるのかどうか、という事だったんです。
第一巻のラストシーンをいったん書き終わった後に、担当編集の三木さんから『人生相談、まだ続くから』というような台詞を入れてくれってイキナリ言われて、『えっ、何で終わっているのにそんな台詞を入れるんですか?』って聞いたら、『えっ? だって人生相談、まだ続くから』って作中ほぼそのままの台詞を言われまして(笑)。
かーず:本が続くからという意味で言われたんですか(笑)
まさに京介そのままの心境だったわけですね。
伏見:はい。まさしく作中のとおり、マジで?って思いましたね(笑)。で――そういう形で続巻が決定したわけですが、第一巻はキャラクターの設定で勝負する部分が確かにありましたから、ファーストインパクトがなくなる第二巻以降はどうしようか非常に悩みました。
かなり不安もありましたが、自分なりによく考えた結果『続ける価値はある』という結論に達しました。この設定だからこそ書ける面白いシーンは幾らでもありますし、そういったものを書いていくのもいいだろうと。
かーず:今回は『夏の想い出』作り……もうバレバレですが夏のコミックマーケットですよね?(笑)
どうしてこれをテーマに選ばれたのでしょうか?
伏見:第二巻が発売されるまでにある(作中に反映させられる)オタク関連最大の出来事ということで、自然とこれに決まりました。
ちゃんとリアルに感じてから書いたほうがいいだろうということで、一般で参加して朝から並んだんです。京介や桐乃が感じていた空気感はかなりリアルに反映させています。作品で描かれるコミケと、現実のコミケ74の舞台を完全に同期させたいと考えまして、気温を測ったり天気の推移をメモったりしていたんですよ。
一同:おおーー!
伏見:この時間にこの辺りはこのくらい混んでいたとか、こういうコスプレイヤーさんがいたとか、メモりながら夕方までずっと歩いていました。セルにもちゃんとお会いして写メを撮らせていただいたり、かめはめ波をやってもらったり……。作中の京介と一緒ですね(笑)。催されたイベントや参加企業、スタッフの変なTシャツ、ブースの配置等々……リアルっぽさ追求するために、全部まるごとコミケ74と同期させるつもりでした。
しかしこの小説は来年以降も売るつもりなので、完全に同期させても逆に違和感が出てくるだろうと編集のお二人からご指摘をいただきまして。例えば気温一つとっても、コミケ74は珍しく涼しかったのですが、たいていは暑いですから、後年読み返すと違和感が出てしまう。
小原一哲さん(伏見先生の担当編集者。以下、小原):企業ブースで配られている『かんなぎ』の紙袋を持っている人が多いという具体的な描写もあったんですが、これも来年読んだ時にどう思うのかという事になって。コミケに参加した人だけが分かるネタを入れるのはアリなんですが、そればっかりだと参加していない読者はつまらないでしょうし、その辺は適度にフィクションを織り交ぜて調整しています。
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インタビュー中のかーず(かーずSP)
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■今回も健在! 『俺の妹 2』劇中ネタの裏話
かーず:そんな小ネタも今回かなり散りばめられていますが
これだけの量のネタを搾り出すのは大変だったんではありませんか?
伏見:私はまだあまりコメディが得意じゃないので、ネタ出しにはいつも苦労をしてますね。
三木一馬さん(伏見先生の担当編集者。以下、三木):伏見さんがそれを言うかな~?
なんというか、イチローが「俺、野球下手なんだよ」という感じの謙遜です(笑)。
伏見:これから勉強して得意になります。いまはまだまだ力不足なので、ネタは三人で知恵を絞って出しています。なので私が編集さんのネタをボツにするということもあります。
三木:僕の考えたネタをプレゼンしたとき、『三木さん……それは面白くないですよ?』って伏見さんから言われました。あれは言われるとかなり凹みますね。僕が作家さんにいつも言っていることが自分に返ってきましたから。ボツにされたときに作家さんが感じる、悔しさや憤りを肌身で理解させていただきました。
伏見:落ち込む事でもないと思うんです。コメディのネタってやっぱり10個出したら10個全部が面白いという事はまずないんで。たくさんネタ出しして、その中から良いものだけを選べばいいんですから。
三木:さすがイチロー! 慰められちゃいますね。もっと僕を奮い立たせてください(笑)。
小原:あなたは編集者でしょう!?
伏見:ただそうやって編集さんのネタをボツに出来る関係があるのは良いことだと思います。ボツネタの例を挙げると、『蛇ノ道ハ蛇ソフト』さんというメーカーがコミケ等のイベントでやっていた、美少女紙芝居。エロゲーを紙芝居仕立てにして声優さんが読むという非常に斬新なイベントなんですが、それを桐乃たちがみんなで見に行くというコメディシーンがありました。もの凄い勢いでボツになったのを思い出します。おっかしーなあ……絶対面白いと思ったのに……。ライブで見た人たちならきっと同意してくれるはず。
三木:黒猫の邪気眼ネタもポツポツと消えました。本編にやや似たようなシーンはあることはあるのですが…、京介に『お前、暑くないのか』って訊かれた黒猫が『妖気で熱気を遮断してるから平気だわ』みたいな話があって、その時、黒猫が凄く可愛く見えたんですよ。「この娘、やべぇ!」(※可愛いという意味です)と興奮していたら次の稿には無くて、伏見さんがケロっとした顔で「ボツですよ」って。さすが生みの親! 頭を下げて「入れてくれ」ってお願いしましたね(笑)。
伏見:あれ(黒猫の邪気眼ネタ)は書く時は勢いで書けるんですけど、あとで読み返すと消したくなるんですよ。
かーず:まさにそれって邪気眼特有の現象ですね(笑)。他にも裏話ってありました?
伏見:作中に出すエロゲーのタイトルを何にするかという事で会議を開いたんですが、二人とも乗り気じゃないので、「エロゲー批評空間」っていうサイトで、「妹」で検索して出てきた妹ゲームリストを小原さんに送りまして。で、検討してもらって、小原さん渾身の命名『妹と恋しよっ♪』が生まれました(笑)。
小原:どうやら3人の中で僕が一番エロゲー歴が長いらしいので、ゲーム内容のジャッジも含めてタイトルを考える役目を押しつけられた感じです。渾身の……と言うわりにはヒネりも何もないタイトルですが、作中ではひと目見ただけで妹モノのエロゲーだとわかってもらわないといけませんから、これくらいストレートなほうがいいだろうと。あとアクセントに音符マークを付けて「明るくイケナイことを誘ってる感じ」を出してみました。リストアップされたたくさんの妹ゲーを見て、メーカーさんの苦労がわかったような気がします(笑)。
伏見:それ関係のネーミングで電話するのがホント嫌なんですけど(笑)。
小原:そんな事言わないでくださいよ。電話で僕、近くに女性とか居るのに『妹と恋しよっ♪』でどうです?とか、「監禁」系はNGとか、もっと扇情的にいきましょうとか、何度も何度も……。僕の方こそ恥辱プレイなんですよ!
伏見:お互い様です。私はいつもファミレスから電話してます。
かーず: (笑) 今回は劇中に出てくる格ゲー『真妹大殲シスカリプス』が凝ってましたね。
三木:あれには元ネタがありまして、それを伏見さんがど~してもやりたいと。
ネタ元はウチのレーベルの某作家さんの作品ですね。
伏見:三木さんの台詞にはやや誇張が入ってます……!
あ、そうそう、それちゃんとご本人には伝えてくださったんですよね?
三木:いや、まだ言ってないですね。
伏見:そこは言っといて下さいよ!? またしても事後承諾じゃないですか!
一同笑い
■またもや実名サイトが登場! どうして一体あのサイトが?
かーず:今回も実名サイトが出てきますが、Mouraさんのインタビューの時にも話題になっていたMOON PHASEさんが本当に出てきましたね。
伏見:あの通り三木さんからの提案だったんですが、ネタ振りが非常に攻撃的だったのを思い出します。当初はメタな感じで、「MOON PHASEを叩け」と。
三木:違いますっ! た、確かにそう言いましたけど、そのあとフォローは入れてくれって言いましたよね?(必死に弁解) えーとシーン的には、桐乃の『最新情報なんてニュースサイトですぐ見れるじゃん!』という主張に対して、黒猫が『貴女はいいかもしれないけれど、告知する側の人たちはフライングによって宣伝の予定を崩されて、悲しんでるかもしれないわね』というやりとりを入れようって話をしたんです。つまりは、桐乃と黒猫が支持派と否定派に分かれて会話して、それを第三者である京介がモノローグで「ああ、いろんな考え方があるんだなぁ」みたいに語るという。
伏見:な、なんか必死ですね……手の動きとか。あと汗がすごい。
三木:誤報は危険ですからね……!
かーず:まとめるなら、イベントでの初出し情報やフライング情報がすぐにネットで広まってしまう功罪について、客観的な視点で冷静な分析をしたということですよね。
三木:ええ。ちなみに僕はMOON PHASEさん好きですよ。フォ、フォローじゃないですよ。すごく巨大なサイトだし、あそこで取り上げられることによって利益にも繋がることもありますし。フライング情報問題に関しては、小さい単位の僕たちが規制に動こうとしても、そういう大きな流れって絶対に止まらないじゃないですか。そこを毛嫌いしていても思考が硬化しちゃうんで、自分がユーザーであるときの恩恵を前提に、それとどう共存できるかを想像していくほうが今の立場の僕には利点がある、と思ったんです。でも、たまに「いいなぁ、僕もフライングで電撃文庫の情報を告知したいことがあるんだよなぁ~……」って羨ましくなりますよ。僕がそれやったら宣伝部にすごい剣幕で怒られるので(笑)
かーず: (笑) それにしても、もう一つのサイトは意外すぎて驚きました。
三木:例のあれですね。僕が「実名サイト出してよ」っていったら、それこそ次はカトゆーさんあたりを出してくると思うじゃないですか。そしたら伏見さんって、『カ●●●●●ム』を出してきたんですよ! この人は天才だと思いましたね。やっぱり他の人とは違うんだなと。
一同笑い
伏見:でも初稿では小原さんに赤線引かれて消されてて、「あー終わった」と思いました(笑)。
小原:いや『カ●●●●●ム』は駄目でしょ(笑)。だって、あれを読んで検索した人が、そのサイトを見た時にどういう反応をするのかという事を考えると、僕としては出せないと判断したんですが、もう一人の編集は……。
三木:僕はあの名前を見て、絶対に実名で載せる!って思って、最後のギリギリまで伏せ字にしなかったんですが、いろんなやりとりの結果ああいうかたちになりました。
かーず:いろんなやりとりとは?
三木:純粋にモラル的な観点や、編集長からの指摘まで多岐にわたっていまして、どうにも簡単には説明できません…… (だんだん声が小さくなる)
小原:……まあ、結果的に「伏せ字」という形で本には載りましたが、たいていの作家さんはボツになるのは嫌ですから、そもそも自制される方が多いんですよ。でももしかしたら、そのせいで新しいエンターテイメントが生まれるのを阻害しているかもしれないですし、そういうボツを恐れずに攻めの姿勢で書いてきてくれるのは非常にありがたいです。
伏見:強打者を前にしたピッチャーの気持ちというのでしょうか、どこに投げても打たれるような気がするんで、じゃあ思いっきり投げるかって。
小原:だからってビーンボールを投げるのはどうかと思うんですが(笑)。でも、これを打ち返せる読者がいるから世の中は分からない。
三木:なんか野球のたとえばっかりがうまくなってきたような……。
ギミック一つとっても非常に盛り上がる伏見先生インタビューですが、もちろん俺の妹がこんなに可愛いわけがない(2)最大の魅力は本編にあり!
12月10日掲載予定の『伏見つかさ先生インタビュー後半』では、新キャラクターやストーリーの核心に至るまで、ますますディープに迫っていきたいと思います!
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ここで伏見つかさ先生&かんざきひろ先生のサイン色紙、「俺の妹(2)」伏見先生サイン本+ポストカードのプレゼント!
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サイン色紙 「高坂 桐乃」 1名 |
サイン色紙 「黒猫」 1名 |
サイン色紙 「麻奈実」 1名 |
「俺の妹がこんなに可愛いわけがない(2)」 伏見先生サイン本+ポストカード 5名
当選された方(色紙3名+サイン本5名)に、メールをお送りしました申し込み方法
■受付メールアドレス:oreimo2@yahoo.co.jp
■受付期間:2008年12月5日(金)~2008年12月19日(金)
■ハンドル/ペンネーム (本名ではなく)
■志望アイテム いずれか1点
・サイン色紙「高坂桐乃」
・サイン色紙「黒猫」
・サイン色紙「麻奈実」
・ 「俺の妹2」伏見先生サイン本+ポストカード
■伏見つかさ先生、かんざきひろ先生への応援メッセージがあれば
・当選者への当選お知らせメール 12月20日(土)夜予定
・申込は1人1件まで。複数申込は無効。申込多数の場合抽選となります
・当選発表は、当選者への当選お知らせメールをもってかえさせていただきます
・当選お知らせメールの際、お届け先とサイン色紙へのお名前をご返信ください
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俺の妹がこんなに可愛いわけがない(2) 発売→メロン積み
重版再入荷 初版よりもタクサン → また売り切れ
「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」 売り切れてる
「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」 かーずSP・アキバBlogが名指しで登場
【関連リンク】
伏見つかさ先生のブログ 「LUNAR LIGHT BLOG」
かんざきひろ先生のブログ 「tabgraphics_blog」
電撃G'smagazine.com
電撃文庫&電撃文庫MAGAZINE
取材・文:かーず(かーずSP)
取材協力:ノトフ(はつゆきエンタテインメント)