【コラム・ネタ・お知らせetc】 「うみねこEP4」 竜騎士07先生 制作秘話インタビュー
――「EP4」の制作はいかがでしたか?
竜騎士07(以下 竜):
「EP4」は絶対に間に合わないはずだったんですよ。
当初のペースでいくと、マスターアップは1月の第1週が終わるころの計算だったんです。
頒布日が12/29なので、日数が全然足りないはずでした。
BT(スクリプト・WEB管理担当):
どう計算しても間に合わない。どうしよう…と(笑)。
竜:間に合うはずのないものが、間に合った。
それを07th Expansionでは「宇宙」と呼んでいます(笑)。
――宇宙ですかっっ!?
竜:アインシュタインの相対性理論によると、光速に近づけば近づくほど
時間の経過はゆるやかになるというじゃないですか(笑)。
そんな感じで、体感の時間の流れが非常にゆるやかで、普段の2倍以上の作業を短期間でやった非常に密度の濃い時間だったんです。それを称して「宇宙」(笑)。
たとえば自分でいえば、通常時が1日5000字、末期になるとアベレージ10000字越えというのがいつものペースだったんですが、あのころは20000字超えでしたから。1週間あればラノベ1冊の分量になるくらいですね。現場の雰囲気も、普段は絶叫が飛び交う系の修羅場だったんですが、今回はそれを超えてしまっていましたね。
みんなが緊張感という重力から解き放たれてきて、淡々ともくもくと冷静にこなしていたんです。
もしや知らないうちに私たちの動きは光速に近づいていたのでは…(笑)。
――修羅場なのに落ち着いていたんですね。
竜:今回は、達観の域に達したかのようでした。もちろん、みんな焦っていたんですが、それでは100%の力が出ない。間に合わせようとしていたんだけど、その「間に合わせたい」という欲からも解き放たれたことによって、ミスもなく最大限のクオリティを出すことができたんだと思います。
スタッフ全員が奇跡と呼べるようなミスのなさ、クオリティの高さでの制作をする、まさに奇跡の連発状態だったんです。もちろん、これまでの修羅場で培った経験も大きいですが、奇跡が当たり前になっていた。
今回の経験で、「がんばる」とか「本気出す」とかそういう気持ちすら邪念なのでは? と思ったりしました。意識すること自体がプレッシャーになっちゃって。潜在能力というのは達観の境地でしか出ないのかもしれません。
――「間に合わないかも」という心配はしませんでしたか?
竜:なぜかわからないけど、「間に合わない」というビジョンが頭に浮かばなかった。
その代わりに「絶対完成する」という気もありませんでした。
ふわふわと宇宙を漂っているかのような感じでした(笑)。
昔、「ひぐらし 目明し編」の時に雑誌のインタビューで、「執筆時にノってくると、『紅の豚』の精神世界のようなところを一人で漂うような神秘体験があります」と答えたことがあるんですが、今回はそのもっと上、成層圏のさらに上の、まさに「宇宙」に行ってしまった気がします。そうなってくると、「落ちる」ということに対する恐怖がなくなってくる。
ビルの100階から落ちたら死んじゃうと思うけど、宇宙から落ちるのだったら死ぬとは思わないですよね。そういう感じで「落ちる」ことへの恐怖がありませんでした。
「死より恐ろしいものがある、それは死を恐れなくなること」というセリフがありますが
「落ちる」ということを認識できなかったんですよね。今思うと非常に怖いことです……。
BT:私は、普通に落ちる事への恐怖心があって怖かったですよ(苦笑)。
竜:スタッフ全員が「どうしよう、間に合わない」というムードの中、私が突然小此木やら鯖吉やらを描き始めて、「見て見てー!」とBTさんのところに持っていく。すると「そんなの描いてる場合ですか」的なBTさんの生温かい笑顔。「よかったですね」と一言でスルーされる。あのときは不思議な孤立感、空気の断絶感を感じましたね(一同笑)。今回、間に合わすためにクオリティ落とすという選択肢もあったけど、そういうのはまったく考えなかったんです。
BT:竜騎士さんの作業が常人離れしたスピードで…。表お茶会の時点で「あと3日かかるな…」と思ってた作業が1日くらいで「終わったよ」って。集中力がすごかったです! 面白い話を書いたりとか以前に、あの執筆とクリンナップの早さが普通の人には出せないところです。
竜:今、冷静にこうして振り返ると二度とあってはいけない修羅場だったと思います。
こうして間に合ったのは本当にラッキーで。締切を恐れないというのは怖いですね。
この冬、奇跡のような出来事を07th Expansionの誰もが目撃したんだけど
誰もがそれを奇跡と思っていなかったことが奇跡だと思います。そして「宇宙」…。
それが「EP4」最大の感想です。ただ、あの宇宙は危険です……。
BT:もう宇宙も異次元も勘弁願いたいです……(一同笑)。
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いかがでしたでしょうか。
Kも、コミックの連載などで竜騎士07先生とお仕事させていただいておりまして、竜騎士先生のスケジュールの詰まり具合はよく承知しております。特に夏コミと冬コミの間は4か月しかありませんからね。その中で、「EP4」のあのボリュームとクオリティ。ひたすら驚くばかりでしたが、このような、まさに次元を超えた修羅場の中で制作されているのですね。
このインタビューの続きは、「ガンガンパワード4月号」(2/21発売)に掲載されます。
「うみねこEP4」の反響に対する感想など、さらに色々うかがっております。
▲インタビュー中、BT様のお仕事机に、夏海ケイ先生「うみねこEP1」と、鈴木次郎先生「突き刺せ!! 呂布子ちゃん」のコミックスを発見。毎号ご感想を書いていただき、有り難うございます。
ガンガンパワード編集部 K
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