アニメ「刀語」放映記念! 西尾維新先生インタビュー [後編]
講談社BOXが立ち上がった時に企画されたことだったんですけど、楽しんでいただけたという事でしたら非常に嬉しい話なんですが、私は絶対に二度とやらないと、ここで声を大きくして言いたいですね。
(一同笑い)
―――やはり大変だったと(笑)。時代物という構想は前々からあったのでしょうか?
ホームグラウンドである推理小説でも人が死ぬ事件を書いていて、この『刀語』も殺し合いの話なんですよ。人も死ぬし、自分も死ぬかもしれないという話ですね。だから時代物というくくりには、あまりこだわるつもりはありませんでした。『化物語』で「人生は続く。」というテーマで書いた後に、その対極にある「人生は終わる。人が死ぬ。」というものを書こうと思い、そのときようやく時代物というジャンルを書けると思いました。
特に真庭忍軍の死に様なんかは書いてて楽しくてしょうがなかったです。その時は「こいつら格好いい! 大好き!」っていう気持ちで書いてました。ただ忍術を考えるのは大変というか、そもそも真庭蝙蝠以外は忍術でもないですしね。格好といい能力といい(残り十一人は)大道芸人じゃないのか。一体何をして忍者なのか、お前らは忍べって思いますよ(笑)。
―――(笑)。そして、読者的に気になるのが、女性キャラ二人・とがめと否定姫かなと思います。彼女達に関してはいかがですか?
この物語はとがめが引き起こしたといってもいいですから、彼女は強いキャラクターとして書いたつもりです。ただ、ある意味では否定姫の方が上です。二人がやりあった場合九割九分とがめが勝つんですが、恐ろしいのは否定姫は政治的に何度蹴落としても復活してきて、武力に訴えようとすれば守護してくれる者もいる。とにかく強い。
―――否定姫は西尾先生の作品の中でも最強クラスのキャラクターになるのでしょうか?
色んな要素を総合して一番上に立てるやつは誰かって質問ですね……、そうするとやはり、最強は『化物語』の阿良々木(あららぎ)君ですね。彼は人から愛されるという能力を持っていて、それは結局一番強いんだろうと思います。羽川さんにしたって本気で彼と向き合った時には阿良々木が勝っちゃうでしょうし、否定姫にしたって「仕方ないな」っていう感じでスルーしちゃうでしょうから。
―――前回インタビューの時には、阿良々木君の将来は獄中に入っているかもしれないという話でしたが(笑)
最近、阿良々木君は変態としか呼ばれなくなってますからね。あそこまでやってもなぜか許されちゃう不思議なモテカワオーラが彼にはある上に、半ば不死身っていう肉体的にも凄まじい能力を持っています。最初は最強キャラは『戯言シリーズ』の戯言遣いかなって思ったんでけど、彼は意外と一部、てる子さんあたりから嫌われているので。 ある種、持たない者ほど強いみたいなところがあるんじゃないかと思います。その点阿良々木君って半分人間を失っているようなものですし、しかも不死身っていうのは命を持っていないのに近いものがあります。だから『偽物語』の下巻でも影縫 余弦(かげぬい よづる)さんと敵対しても何となく許されたりとか、結局ああいうヤツが一番強いんじゃないかな。
―――貴重なお話ありがとうございます。では話を戻させていただいて、『刀語』の連続刊行が終わって二年が経過して、完結時と今では心境の違いなどはございますか?
『刀語』を書いている2007年は「今年が人生で一番忙しい年だな」と思って頑張って乗り切っていたんですけど、それ以降いっこうに仕事が減らない……それまで速筆とか言って調子に乗っていた奴に天罰が下ったわけで、そろそろ神様も許してくれてもいいんじゃないかと思います。今年は二冊しか書き下ろしてなくて、小説を書くのが速いっていう若気の至りの発言を取り消す作業の最中です。
―――次回作のご予定は?
『真庭語』の続編を『刀語』放映中に出したいですね。それと今は『化物語』の十三話を観て『猫物語』を書きたいというモチベーションが凄く上がってます……が、やはり出版というのは思い通りに運ばないものなので、予定は予定として頑張れるだけ頑張ってみます。
―――どちらもアニメ同様、楽しみにしています。それでは最後に、ファンに向けてメッセージをお願いします。
アニメ『化物語』、ご好評いただきありがとうございました。来年からまた『刀語』が始まりますが、注意点としては「カタナモノガタリ」ではないと。よくそういう間違える方がいらっしゃいますが、それだと本屋さんで探しても出てこないので、そこだけ注意していただいて『刀語』をよろしくお願いします。あとは、新聞のラテ欄で、千刀・?がどう表記されるかをお楽しみに(笑)!
―――(笑)。ありがとうございました。
(C)西尾維新・講談社 /「刀語」製作委員会
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取材・文:平和(平和の温故知新)、かーず(かーずSP)、ノトフ(はつゆきエンタテインメント)