2011年08月11日
【コラム・ネタ・お知らせ】PCゲームからのコンシューマー(家庭用ゲーム機)化ビジネス。それはただ単に"移植"すると言うことではないのだ!

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コンシューマー(家庭用ゲーム機)市場が、PCゲームメーカーの「夢」であり、憧れだった時代があった。
20年くらい前だとPCゲームもコンシューマも今の10倍近く売れていたんだ。
グッズなどの関連商品はほぼなく、みんなひたすらモニタやテレビにかじりついていたね。
なぜなら、そこにしか"嫁"が存在しなかったから……。
いやー健康的ないい時代でしたよ(笑)
さてさて、みなさんコンニチワ!
つい最近近所のトイザラスに行ったら、PS3のソフトのコーナーが撤去されていてびっくりしたvavaしゃちょーです。
今日はビジュアルアーツが行っているコンシューマ市場への移植と、それを担当いただいている株式会社プロトタイプについて、お話ししたいと思います。
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コンシューマ(家庭用ゲーム機)新旧いろいろ。。。うーむ、あの頃僕らは若かった(笑) 記念すべきビジュアルアーツ初のコンシューマ移植はNECインチャネ製ドリームキャスト版Kanonだ。あーなんてコントローラのシビれるフォルム!」 |
【前回までのコラム】
第1回 / 第2回 / 第3回 / 第4回 / 第5回 / 第6回 / 第7回
・最速ビジュアルアンテナ
・馬場社長ツイッターはこちら
元作品のPCゲーム(私が言う場合エロゲーね)が売れると、今でもコンシューマへの移植が行われる。それが15000本くらいが起点になることは前回お話ししたよね。
ありがたいことに、ビジュアルアーツも少なからずコンシューマ化をさせて頂いています。
ご存知の方も多いと思うど、いつも移植に関しては株式会社プロトタイプにお願いしているんだ。
この会社の社長である多部田俊雄(たべたとしお)氏は、その昔、学生時代に電波新聞社の「月刊マイコン」で連載記事なんか書いてた天才プログラマーだ。
その後NECアベニューに入社して、PCゲームのコンシューマ移植を積極的に手掛けた凄い人である!
彼とは『Kanon』の移植からだから、もう10年以上のおつきあいになるんだ。
月日が流れるのは早いものだね。
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多部田社長 ご尊顔 20年前のNECアベニュー時代に、PCエンジンにエルフさんの名作「ドラゴンナイトⅡ」を移植しようとした時「PC18禁から家庭用機への移植の前例が無い」というだけで直属の上司が猛反対。 結局、会社の承諾を得られないまま、移植決定の記事をゲーム専門誌に載せてもらい、既成事実を作ってしまった上で強引に押し通した武勇伝があるらしい。 結果もちろん売れに売れて会社はウハウハだったが、内規違反という事で始末書はシッカリ…。ちなみにこの坊主頭の写真は約10年前、なにかをやらかした時のものらしい |
◆ 移植チームから見たPCゲームのコンシューマ化の流れ
・売れそうなタイトルの決定
・費用の見積もりと、リクープポイント(何本売れれば黒字になるか)の策定
・制作メーカーへの企画持ち込み、追加変更の調整
・プラットホームへの企画提出
・移植
・マーケティング活動
・ユーザーサポート
ところで……。費用の見積もり例(とあるタイトルの実例) 社内開発費 400万
協力会社開発費(追加制作含む) 640万
音声二次使用料 100万
デバッグ外注 180万
広告宣伝プロモーション費 400万
その他 60万
合計 1780万
タイトル1本あたりの粗利を3000円とすると
リクープポイント:1780万÷3000円=5933本
PCゲームからコンシューマへの移植って、一見簡単そうに見えてその実なかなか難しい。
問題の一番はもちろん全年齢化なのだが、その他にも下記のような感じでいろいろとある。
簡単に言うとコンシューマ機というのは我々の愛するアドベンチャー形式に向いていない。コンシューマ移植の技術的問題点 (1) テレビ画面の解像度が悪くて字が読みづらい(HD以前)
PCとは1ドットの縦横比率すらも違う場合がある。
(2) 家庭用機はなぜか2D表示が弱い&メモリが少ない。
(3) セーブの容量も少ない。
(4) 全て「盤」から読むので読み込み時間が長い。
(5) 同様に音楽、声、CGなどほぼ同時に読み込むためデータ配置が難しい。
だから、ストレスを感じさせない移植というのは相当むずかしいのだ。
そんな中、プロトタイプはそれら"問題点"を解決する非常にすぐれた技術を持っているんだな。
ビジュアルアーツの移植作品のクオリティが高いのは、ひとえに彼らのおかげなのだ。
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見よ、この燦然と輝くコンシューマ版のタイトル達を! え? そんなにクオリティが高いならPC版はイラナイ? PC版はPC版でイイところがあるのはご存じのハズですよ(笑) |
そうそう。
忘れちゃいけない大事なことが一つある。
それは移植が決して
「ユーザー置き去りの二番煎じビジネス」になってはいけない
ということだ。
ゲームの移植と言うと、ただ単なるプラットホームの変更と捉えられがちだが、そうじゃないと思う。
それぞれのプラットホームにはそれぞれのユーザーとその嗜好があるし、求めるものが微妙に違ったりもする。
以前とあるコンシューマ化した人気タイトルで、PCゲームとコンシューマのアンケートはがきを突き合わせてみたことがあるんだ。
結果、9割違うユーザーだった。
そう。両者のお客さんは必ずしも同じじゃないんだ。
移植チームはユーザーの嗜好の違いを察知し、制作チームにそれに沿った変更や追加を進言すべきだし、同時に時には制作チームへ古くなったギャグの変更や書き直しなど、難題を突きつけることがあっても良い。
理想は移植をするごとに、そのタイトルがどんどんこなれていいものになっていくことだと思う。
そうすれば作品は常に最新であり続け、やがては古びない「名作」になっていくはず。。。
そう。
移植チームも我々ゲームクリエイターの一員なのだ!
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プロトタイプが一番苦労したPSPリトバスの野球シーン。 メモリの違いが大きく響いたが結果満足できる出来になった |
今ではコンシューマもポータブルなど多様化し、どんどんPCゲームやスマホに近づきつつあるので差別化が困難になりつつある。
現行商品はもとより、PSVitaやWiiUなど、新たな技術的課題も多い。
PCからのコンシューマ化には、まだまだ目が離せないぞ!
…え?
コンシューマ移植は今はそれほど「夢」ではなくなったろうって?
いえいえ。
そんなことはないですよ任天堂さん(笑)
コンシューマ市場こそ、今もって日本が世界に誇れる産業であり、常にすべてのゲームメーカーの憧れなのです。
なので、我々ももうしばらく頑張らせてください。
PS(追伸的な意味で)
功績と言えば、それまではどうしてもPCゲームそのままのタイトル名では移植不可能で、発売させてくれなかった時代があったりする。
そんな中、ソニーさんに「Kanon」をそのままの名前で発売出来るよう掛け合い、実績を作ってくれたのも多部田社長だったんだよ。
PS2(もちろん追伸的な意味で)
現在ポータブル機はスマホ、電子書籍機などその他のいくつかに多様化しつつある。
こういう時こそ、移植のやりがいがあるよね。
PS3(以下ry)
だけど移植ばかりやってるとコンテンツホルダーとしては不安になる。
制作チームにしっかり前に向いてもらう意味でも、そのタイトルに少し離れた観点を持つ意味でも、移植は別会社でやるほうがいい。
■ 第一回キネティックノベル大賞の授賞式が行われました!
この度、第一回キネティックノベル大賞の授賞式を無事に行うことができました。その様子をお伝え致します。
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授賞式の冒頭において、vavaしゃちょーのご挨拶 |
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会場の様子です。受賞者と審査員が和気あいあいと作品について話し合っていました |
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授賞式中の一枚。みんなにこやかです。 |
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イラスト部門の受賞作品も会場に展示 |
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イラストたちが会場に華を添えました! |
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これが受賞者に手渡されたよ! |
【vavaしゃちょーの人生相談】
なお、このコラムの企画としまして、vavaしゃちょーの人生相談を行いたく思います。
私に相談がある方は下記メールアドレスまで、お気軽にお送り下さい。
ばっさりと切って捨てて差し上げます^^
思ったより相談のお便りが少ないので、みなさんもっと遠慮なくお送りください(笑
どんな内容でもお待ちしております。PCゲームに関係しない相談も大歓迎ですよ。
jinseisoudan@product.co.jp
以下、前回頂いた人生相談のお返事です。
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【ご相談】
先週、社長にご相談を持ちかけた学生です。
遅くなりましたが、御回答いただきありがとうございました。
結局、プロにはならないという結論を出しました。
それでも、今の趣味であれ、詩であれ、それらは副業として続けようと思っています。
まずは本業の定職を探そうと考えています。
そこでvavaしゃちょー様にご意見をお伺いしたいのですが、
vavaしゃちょー様はどのような考えで最初の職業(サラリーマン?)を選択したのでしょうか。
また、色々な経験がたまった今、就職当時を振り返って、ここはこうすべきだった、あれはやらないほうがよかった、などの反省点や後悔のようなものがありましたら、お聞かせ願えないでしょうか。
是非宜しくお願いします。
【回答】
そうですか。
結局プロにならない選択をされたのですね。
しかしまたいつかチャンスが来ると思いますから、ぜひ今の趣味は続けられるといいと思います。
さて。
私が最初の職を選んだ理由は
・社員数が100人以上
・売上高が100億以上
・業績推移が右肩上がり
こんな感じで条件を設定し、そういう会社を探しました。
アルバイトをたくさんやった経験から、就職するならちょっぴり企業としてのスケール感みたいなものが欲しかったのと、やはりなによりつぶれない会社がいいと思いましたし、あとは業績が上がっていけば自分も出世できるんじゃないかと(笑)
業種とか職種とかはなにも考えてませんでしたね。
どうせ新入社員のやることは営業だろうし、売るのが仕事なら、なにを売っても同じだろうと。
ただ今から思えば・・・
かなりいいかげんに選んでしまった感があります。
学生に自分の人生の一生の仕事場を選ばせるなんて難しすぎて無理ですね(笑)
後悔はしてませんがもっと大人の意見を訊きに行けばよかったかもしれません。
貴方は立派だと思います。
少なくとも真剣に考えておられる。
面倒がらず流されず、しっかり選んでください。
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【ご相談】
こんにちは。初めまして。
私は大学二回生をやっている男子です。
将来、貴社でシナリオライターとして働きたいと考えているのですが、そのことに少し疑問、というより不安があるので、相談させてもらいます。
私は幼いころから、小説家等の物語を書く仕事がしたいと思っていました。
そんな私が高校生のとき、貴社の作品の「CLANNAD」をプレイして、感じたことがないほどの感銘と感動を受けました。 感動して、感動して、部屋で一人で、はたから見たら心配されそうなくらいに涙をぼろぼろ流しながら、「この感動を、俺が書いた話で誰かにも感じさせてぇー!」と思い、それから貴社でシナリオライターとして働きたいと志すようになりました。
とはいえ、私には何も実績なんてありません。
過去に小説で賞をとったことがあるだとか、ゲーム制作に関わったことがあるだとか、専門学校で学んだことがあるだとか、そんなことは一切ないのです。
一応、やれる努力はやっているつもりですし、情熱とバイタリティと粘り強さだけは持っていると自負していますが、正直、自分に才能があるとは思えません。 実績も才能もないなんて書いちゃって……こりゃもう、馬場社長にバッサリ切られるだろうなー……と、今から覚悟していますが、とにかく夢を諦めたくはないのです。
ですが最初に書いたように、私はいま大学二回生です。そろそろ現実を直視しなくてはいけない時期が近付いています。 兄弟はいないし、父親もいない……つまり、これからは俺が、母と祖父と祖母を食わせていかなきゃならない身分になるわけだし……もう諦めたら?……と、諦めきれないながらも、どこかではそう思ってしまいます。
でも、やっぱり諦めたくはないのです。なので、自信喪失しまくりながらですが、やれるだけのことはこれからもやっていくつもりです。 こんなどうしようもなくて、夢が諦められない若造でも、貴社にシナリオライターとして入社して、やっていくことは可能でしょうか?やっていける可能性はあるでしょうか?
正直、バッサリ切られても諦めるつもりはないのですが、今後の参考にしたいので、率直な意見をお願いします。
【回答】
当社でシナリオライターを志望ということなので、私も一般論でなく、VAの社長としてお答えしましょう。
才能があるのかないのか、まずはそれを自ら見極めていただきたいと思います。
当社では数名のシナリオライターがおり、来期も新人を数名採用する予定ですが……
しかし、いくらなんでも自分の才能を信じていない人間を雇いたくはありません。
あれこれ悩むより、やってみるのが一番ですよ。
まずは小説でもシナリオでも書いてみませんか?
トリガーがいるならお題は私が出します。
『夏のいけないダイアリー』
でいかがですか?
余談ですが、貴方のご相談の文章を拝見するかぎり、少なくとも熱いなにかは伝わってきますし、平易ですがリズム感ある構成も悪くありません。
意外にやってみる価値はあるのではないか、と思うわけです。
やってみて、粘り強いと自負する貴方が完成できなければ、そもそも商業に足る才能はなかったのだと思いますし、完成出来たら、少なくとも最低限のなにかはあったのだと思います。
すぐそれを当社含め、数社に送ってみましょう。
それでなんらかの結論が出るのではないでしょうか。
…でもね、ちょっぴり急いでくださいよ。
大学2年なら、残された時間はそう多くありません。
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【ご相談】
馬場社長、こんにちは。
ヨネと申します。
全くPCゲームに関係ない悩み相談ですが、どうかばっさりお願いします。
数年前に結婚しまして、夫の親族とのかかわり方について悩んでいます。
本人に悪気はないと思われますが、ブツブツと独り言を言う性質の義姉に参っています。
夫によると「小さい頃からずっとで、心の病気みたいなものだから……」という話です。
かといって、カウンセリングを受けているとか、専門の人に診断してもらうような重度のものでもないようです。
義理の両親は、彼女の性質に関して一言も触れずにいるので、私としても家族のデリケートな問題にうかつに口を出す事ができません。
様子を見ていると、義姉には悪気はないのだろうと感じます。
自分が何かをつぶやいているという自覚もないのかもしれません。
結婚当初の攻撃的な言葉は、いきなり同居を始めた他人の私に戸惑っていたからなのでしょう。
あるいは、ぶつぶつとつぶやく事で、彼女自身が落ち着くのかもしれません。
どんな言葉が出ても怒りを抑え、スルーし、なるべく明るく接したところ、最初の頃のようなキツい言葉は徐々に減ってきました。
相変わらず独り言は続いていますが、最近では、キツい言葉は滅多にありません。
おそらく、義姉も夫の家族も、この先変わらないでしょう。
私が、気持ちや感じ方を変えるしかないと思います。
数十年も経てば、ある程度水に流し「ガッハッハ!」と笑い飛ばせるようになるかもしれませんが、
今、自分の心を打たれ強くするにはどうしたらいいでしょうか?
【回答】
相手のご家族とご同居されてるのですか。いろいろ大変ですね。
世の中にはいろんな人がいます。
最近は減りましたが、私も創業当初はいろんな社員に出会いました。
用を言いつけようとしたら「ちっ!」と舌打ちするクセの社員とか、仕事の出来をたった1回注意したら笑顔で「わかりました!」と答えたのに次の日から連絡もなく来なくなった社員とか、仕事中なんの脈絡もなく突然立ち上がって「俺が悪いなら土下座しましょうか?!」と叫びだした社員とか、妙な奴はまあ、いるもんです。
家が違えば考え方も文化も微妙に違うのに、結婚はその垣根を修正せず強引に結合させてしまうわけですからただでさえ戸惑うことが多くて辛いことばかり、その上そんな妙なクセの義姉さんと同居するのはさぞかしご苦労だったと思います。
貴方はすでにご回答をお持ちのようですから、私からはなにも申せませんが、ひとつだけ言えるとすれば同居では必ず問題になる嫁姑問題がご相談にないのは、あるいはその義姉さんのおかげかもしれませんね。
そういうご家族がいればこそ、姑さんやご主人は貴方に一定の敬意を忘れないのかも、ということです。
案外に義姉さんはクッションになってくれているのかもしれません。
あと、心の打たれ強さは、逃げないことから始まります。
そして貴方はすでに十分強いと思います。
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【vavaしゃちょーからのお知らせ】
我々の最近の取り組みに『あそべる! BD-GAME』というのがあります。
この『あそべる! BD-GAME』はブルーレイ機器内蔵のCPUによりゲームプログラムを動作させるというもので、単なるシーン再生により構成されるDVD-PGとは違い、これからの新しい汎用プラットホームになりうるポテンシャルを秘めています。
今回はまだ既存商品の移植にすぎませんが、実際にゲームが動作するのを皆さんに確かめていただきたくて、展示会を開催することにいたしました。
● 『あそべる! BD-GAME』の展示会 8月19日(金)(於)秋葉原UDX
ご多忙中恐れ入りますが、どうぞふるってお越しくださいませ!