2011年10月20日

【コラム・ネタ・お知らせ】 広報、マーケティングはビジュアルアーツの重要な業務のひとつなのです

広報 マーケティング アキバBlogをご覧の皆様は、新しい情報をどこから仕入れますか? アキバBlogさんの記事からは当然として、その他にもイベント・広告・口コミなど色々ありますよね。今回はそんな「広報活動」の考え方や、活動についてお話ししてみたいと思います。

ビジュアルアーツでは社内、社外ブランドの制作したゲームに関して、広報を一元管理しています。広報、マーケティングは弊社の重要な業務のひとつなのです。

えらいこっちゃ!

業界初ーなのかどうかは知らないけれど、今年keyから発売した新作『Rewrite』ではとうとうテレビCMをやってしまった。

みんな見てくれたかな?

【前回までのコラム】
第1回 / 第2回 / 第3回 / 第4回 / 第5回 / 第6回 / 第7回 / 第8回 / 第9回
第10回 / 第11回 / 第12回

最速ビジュアルアンテナ
馬場社長ツイッターはこちら

いやー、実はこういうの一度やってみたかったんだ(笑)

最初はエイプリルフールに合わせて公開したオープニングアニメだけど、その後テレビのCMとして放映。アニメを見ていたら突然『Rewrite』のCMがテレビから流れてきて、驚いた人もずいぶんいたと聞いた。

まさにしてやったり!

……だけどこういうのには、とってもお金がかかるんだよね。

まずアニメを作らないといけない。当然当社では無理なのでアニメ制作会社さんに制作をお願いすることになる。さらにテレビCMを流すためには広告代理店を経由し、当然放映するにも広告料が必要になるんだ。

『Rewrite』はKeyが何年もかけて作っていた大作ゲームだし、それなりに大きな売上げも見込めたから出来たことなんだけど、普通のゲームじゃそうはいかない。


◆ゲームの広報はとはなにか?

言うまでもなく、このアキバBlogはアキバ系コンテンツに興味がある一般のユーザーに読んでいただくWEBサイトだよね。 だからあまり専門的な話をしてもつまらないと思うので、我々メーカー側がどういう考え方で宣伝を作っているのか、という観点からお話ししてみたい。

会社によっていろいろ違う部分もあるし、人によっても違うだろうけど、私やウチの営業本部はだいたいこんな感じでゲームの広報、宣伝戦略を考えてる。

1. なにはなくともまずは『ウリ』

まず宣伝するには宣伝できるなにかが必要だ!

絵が可愛い、CGが美しい、シナリオが面白い、テーマが斬新、新しいシステムが秀逸、今までにはなかったなにか、強み、etc、etc……。

そんな『ウリ』がある場合、それを出来るだけ多くの人に知っていただく方法を考える。

それが広報であり、宣伝なんだな。

『ウリ』が明確になれば、その宣伝媒体(メディア)まで決まってしまう事すらあるんだよ。 たとえば「SFの世界観がウリ」であるとき、そういう作品が好きな人がよく見る雑誌、WEBサイトに宣伝をするといったようにね。 それこそ、アキバ系のコンテンツが、アキバBlogさんに広告を出すように。

だからまずはなによりその作品の『ウリ』をいくつか決めること。それが最重要課題だ。

雑誌の広告で今までで一番効果があったのはこのタイトル。
スタジオメビウスのSNOWは可愛い女の子、良質なシナリオ、抱っこシステム
という『ウリ』が見事にユーザーの心を掴んだ

……え?

もしもなに何一つとしていいところがなく、『ウリ』の無い作品があったとしたら、だって?

うーん、その場合、それを知らしめることはやればやるほど買いたくなくなるという逆宣伝になってしまう。それじゃ広報の意味がないよね。

どこにも『ウリ』がない。もし本当にそんな作品があったとしたら──その場合はその作品の『全て』をできるだけ正直に告知するのがいいんじゃないかな。

たしかに、平凡でこれといった特徴もなく、取り柄の無い作品を宣伝するのはむなしいけれども、でも、なにを好むかは人によりけりだ。
よってその作品の『個性』も含めて、できるだけ多くの情報を提供するようにすれば、少しは嗜好の合うユーザーを見つけることができるかもしれないね。


2.ユーザーの不安を知る

先日テレビのビジネス番組で、新しい駅のPRにスポットライトを当てていたんだけど、その宣伝文句がなんと

トイレがキレイ

みんなも経験があるように、駅のトイレは汚いことが多い。 これが駅の弱点でもあり、顧客の不安だ。それを逆にキレイににすることで、話題・宣伝につなげようというものだった。

このようにユーザーは、その作品に対して大なり小なり不安を抱えているものだ。
だから売る側としてはそれをまず知ることが重要だと思う。
ユーザーの不安が理解できれば、何をすべきかがわかり、どの情報を公開してあげれば不安が払拭できるかがわかる。

「この人の描くキャラクターは好きになれないんじゃないか?」
「このブランドのゲームはすぐ終わっちゃうんじゃないか」
「このシナリオは何度も同じ文章を読まされるんじゃないか?」
「この価格だと絵が少ないんじゃないか?」

ブランドの弱点やそれに対する不安があるなら、それを取り除くことは絶対に必要だよね。それが克服できるならば、それだけで広報する価値があるんだから。

特にそのブランドが何本かゲームを出している場合、前作の欠点がどう克服されたのか、されてないのか、スタッフの変更や新人の起用は新作にどう影響しているのかを、ユーザーは不安に思うはず。そこは意識してしっかりリサーチし、把握しておく必要があると思う。

ご存じ「visualstyle」作品をどんな人が、どういう意図で制作をしているのか、それがわからないのは大いなる不安だ。
クリエイターのインタビューをメインにする小紙は、それを払拭するために創刊した

3.キレのいい話題を提供する

『ウリ』が決まってユーザーの不安を理解したら、なにを見せ、なにを訴えるかが決まる。 キャッチコピーやあらすじ、宣伝文句を考え、公式サイトを作り、いよいよあらゆるメディアを使って型に嵌めた広報を展開していくわけだけど、もうひとつ、忘れちゃいけない大事なことがある。

それは広報効果を高める話題を提供すること。

ネットが発達して人の噂が光の速さで伝わる今だからこそ、もっとも大事なのはユーザーの話題になることだ。だから我々も必死でキレのいい話題を考える。

話題さえ提供することができれば、ユーザーは勝手に作品を喧伝してくれる。これ以上効率のいい宣伝はないけど、これが実に難しい。

ユーザーはメーカーの思い通りに動いたりはしないもの。計算は通用しないのだ。

ただ実をいうと、どんな話題ならみなさんが飛びついてくれるのか、それをアレコレ考えるのは
とても楽しい作業なんだよね。

Key クドわふたー
『クドわふカーが全国を旅します!』
Key Rewrite
『Rewrite Fes』
Key リトルバスターズ!
『リトルバスターズ!『棗鈴』等身大フィギュア Yahoo!オークション開催決定!』
mana AngelMagistar
『兎塚エイジ原画展』
だんであらいおん たいせつなきみのために、ぼくにできるいちばんのこと
『破れるストッキング付き立て看板を設置 → 脱がして設置されて話題に』
フロントウイング 戦国天使ジブリール
『冷やしエロゲ』
クロシェット カミカゼ☆エクスプローラー
『おっぱいクイズと、おっぱい展』
電撃文庫 秋の祭典
『電撃文庫、秋葉原をジャック』
コナミ ラブプラス
『ラブプラス+ 熱海ツアー旅行』
大人のデパートm's 『縞パンすくい』
グッドスマイル
カンパニー
ブラック★ロックシューター
『「B★RSキャンピングカーと行くX'masキャラバン」』

主題歌や声優さんにに有名な人を起用したり、いろんなイベントを計画してみたり、面白い予約の特典を考えたり、ネタを考え、仕込み、雑誌、店舗、自社サイトや動画サイト、その他いろんなメディアを通じて話題を振りまいていくわけだ。

ね、わくわくするでしょ?


◆ネットの活用が今後の課題

とはいえ、かくいう私にも悩みがあるんだな。
それは店舗、雑誌や、イベントなど、数ある宣伝メディアの中で、どうもネットの活用がうまくないってことだ。

いつもご紹介しているように、一応VAには「最速ビジュアルアンテナ」という総合RSSニュースサイトがあったり、ビジュアルチャンネルV-tubeという動画サイトもあるんだけど、いまいちうまく活用できてない。

今後もしもユーザーがネットしか見ない、ということにでもなれば、ことはますます深刻になる。
ネットでの宣伝がうまい人がいたら、是非営業本部に採用したいので、応募してね。


補記
長らくネットに押されていた雑誌は、最近またぞろ売上を伸ばしつつあるらしい。統に培われた編集能力、情報の一覧性はやはり優れているのか。
1タイトルに使える宣伝費は売り上げの10%という枠組み中で、美少女誌は比較的広告料も安いのでありがたい。

その2
店舗ではチラシ配布、壁面ポスターや立ちPOPなど面白い宣伝商材が使えるのだが、いかんせん売り場面積の減少や店舗の減少が悩みの種だ。
パッケージももちろん商材のひとつ。通販の台頭でパッケ裏を見て買う機会もうんと減ってきた。

その3
ちなみにアメリカの政府スポークスマンは、一日の中でどれだけテレビのニュースがどの政治話題を取り上げたか、全て記録して一喜一憂しているらしい。さすがはプレゼンと宣伝の国だね。

ついでに宣伝。mana新作『ましろサマー』のウリはシナリオ。VA屈指のライター魁と丘野が二人で企画し、執筆してるのでそこそこ面白いはず……。楽曲も実力派揃いで素晴らしいデキですよ。


mana新作『ましろサマー』のワンシーン。
1キャラが丸々攻略できる体験版も公開中なので、是非チェックしてください!





■横浜アリーナの下見に行ってきました!

横浜アリーナの下見に行ってきました! え? 何故横アリかって? それは私のコラムのバックナンバーをご覧ください! 色々とオタノシミニ!

どーんと横浜アリーナ!

正面玄関を見るだけだと、それほど大きく感じなかったけど、やっぱりでかかった!(笑

中に入ると広さに圧巻。これぞアリーナ……!

二階席から見ると、本当に広さがわかりますね。さてここで一体何がやれるのか……。

サブアリーナも下見。みんなでバスケットでもしますか?(笑

その他、複数のホール・施設をチェック。あれこれとインスピレーションが湧いて来ました。

エントランスホールはこんな感じ。ここでもあれやこれや……ふひひ。

ちなみにVIP席なんてものもあった。ソファやテーブルがあり、そのまま専用客席に繋がってたゾ


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【vavaしゃちょーの人生相談】

私に相談がある方は下記メールアドレスまで、お気軽にお送り下さい。
ばっさりと切って捨てて差し上げます^^

思ったより相談のお便りが少ないので、みなさんもっと遠慮なくお送りください(笑
どんな内容でもお待ちしております。PCゲームに関係しない相談も大歓迎ですよ。

jinseisoudan@product.co.jp

以下、前回いただいた相談と回答です。

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【ご相談】
はじめまして vava社長さんこんにちわ。
大学を卒業して就職活動しながらアルバイトしているペンネーム ヤマピーです。

僕は非青年実在条例に大反対しています。性的描写を規制したいという、石原都知事さん 政府 保護者 の気持ちはよくわかります。(注釈:事実と異なる内容が含まれていたため、一部編集しました。以下は原文ママ)
しかし、社会実情データーによると 日本は世界に比べてもっとも性犯罪者が低く また警察庁の犯罪統計によるとパソコンが普及し始めた2000年代後半よりもパソコンのない昭和の方が 実は性犯罪が多いです。
でも法律で18歳未満に見える性表現の禁止を政府はしようとします。マスコミは反対者の意見だけを取り入れて報道をする事で 一般国民を洗脳しようとしています。

僕は性表現のあるけれど泣けるゲーム リトルバスターさん とかとても大好きです。
さらに、そういった性表現が購買意欲を高めて 多くの人がエロゲーを買う事でエロゲー会社はまた新しいゲームを作れるのも事実です。
また今秋の ましろ色シンフォニーさんや真剣に私に恋しなさいさん 等 エロゲーがアニメ化されて経済を動かし 声優さんやアニメ会社の雇用を生んでいるのも事実です。

相談ですが個人的にどのように非青年実在条例に反対すればよろしいですか?
今はとにかく選挙に行く事でしか抗議できない事がとても残念です。
とっても失礼ですがvava社長さんも非青年実在条例の反対活動をしていただけると助かります。

長文失礼しました。

【回 答】
都条例とはちょっぴり離れるので恐縮なのですが…

私は国家公安委員会の定例会議事録を読むのが趣味で(笑)よく読むのですが、今から2年前の平成21年6月18日の定例会において、こういうことが語られています。

生活安全局長「児童買春・児童ポルノ禁止法では、実在する児童のポルノを対象としており、アニメ等については対象外となっている。今後の大きな検討課題である」
某委員「アニメ大国と言っているくらいなのだから、この面でも自己規制をする必要があると思う」
http://www.npsc.go.jp/report21/06-18.htm

話題の発端がゲームソフトなので他人ごとではないのですが、この場面でも、現行法で対象外とはなっていると言及はあるものの、自主規制などを望む声があがっていますね。

こうしたことを見るに、わが国において、ゲーム、アニメ、漫画などへの表現規制は国際的な圧力でもはや避けられないように思います。
まるで、この小さくて品のいい島国で、誰にも迷惑かけずやってきたアニメ文化が、獰猛な世界の荒くれ連中によってアレコレ言いがかりをつけられて、イジメられているようです。

一方で、都条例において何度も議論や修正がなされたように、表現の自由を訴えるみなさんの活動は、いきすぎた規制効果を抑制する権力の監視という一定の効果をあげているのではないかと拝察いたします。

問題提起があり、議論と意見の衝突があり、選挙があって民主的に立法されていく。このこと自体は正しいことなので、こうした活動は冷静に、しかし粘り強く行っていくべきでしょう。
この問題に興味を示す政治家との連携も必要かと思います。

また、言うまでもなく、私の立場は企業人であり、表現者でもあります。
ですから、あくまでも法やルールを順守しつつ、その範囲の中において、可能な限り表現の自由を訴えていきたいと考えています。

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【ご相談】
単刀直入にお聞きします。馬場社長の座右の書を教えてください

人生相談とは若干趣旨が違うかもしれませんが、よろしくお願いします

【回 答】
人生に役立つ本、という意味ですか?
でしたら『D・カーネギー』一択でしょう。

『人を動かす D・カーネギー著 山口 博(翻訳)  創元社; 新装版』

あとこれらの本も面白いですよ、と。

『西郷隆盛に学ぶ 石原寛一朗著 新人物往来社』

『「原因」と「結果」の法則 ジェームズ・アレン著 坂本 貢一 (翻訳) サンマーク出版』

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【ご相談】
vavaしゃちょー、こんばんは

Rewrite、大満足でした。
素晴らしい作品をありがとうございました。

ひとつ質問させてください。

第12回コラムに、

>Rewriteはありがたいことに10万を超えるヒット作になり

とありますが、ズバリその数字は出荷総数、売上実数どちらでしょうか?

こちらに11万部を突破という情報もあります。
http://twitpic.com/6wc7gh

ファンといたしましてはぜひ知っておきたいところです。

回答よろしくお願いいたします。

【回 答】
正確な数字はきちんと調べないとわかりませんが、初回版の確定数字はこうです。

・初期出荷86000+緊急追加5000=91000本

それにプラス、今は通常版を出荷してますから10万はあるでしょう。

11万はどうでしょうね。たぶん当たらずとも遠からじってところでしょうか。

返品のない弊社では出荷と実売の差はありません。
また、通常版が出るという事は初回版が市場に過剰に余剰しているというわけでもないと思います。

key作品はここのところいつもそんな感じで、初回出荷でほぼ10万。
その後通常版で順調に15万くらいまでは伸びがあり、アニメになるとさらにもうひと伸び。そのあとえんえんとロングテール。

ただまあ未来の事はわかりませんね(笑)

今回の『Rewrite』もそうなるかどうかは、神のみぞ知る、です。
もちろん1本でもたくさん売れてほしいので、みなさんもっと買ってください!(笑)

閑話休題:

これは作品性の違いでしょうが、感覚的には、やはり「萌え」や「泣き」をテーマにした今までの作品の方が、微妙に熱がある気がしますね。

理性よりも感情は強し、キャラ人気もしかり。

とは言うものの、初代とEX合わせて30万超えて最強(ぽい)リトバスだって、発売当初はなんとなく前作『CLANNAD』のほうがキャラ萌え人気が強かった気がしたし、激しいアクション映画があとになって何も残らず、見たとき「ふーん」でも結局は何度も見直す羽目になる名画もあったり。。

勝負はまだまだ、始まったばかりのようです。

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引き続き音楽集団I'VEさんについてお話ししましょう。
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ビジュアルアーツ創業20周年、その中で最もエポックな出来事だったのはKeyの移籍でした
幹部脱退にすごく悩んだ結果が...今のビジュアルアーツです
ビジュアルアーツの生い立ち。当時はたった1.2MBの記憶容量でゲームを作ったんだ......
初めまして、ビジュアルアーツのvavaしゃちょーです


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