2012年03月21日

パパのいうことを聞きなさい!SS第十六回 「ひとりの時」

パパのいうことを聞きなさい!SS第十六回 「ひとりの時」 おはようございます。松智洋です。アニメ「パパのいうことを聞きなさい!」も遂に第11話が放送されました。第2話以来のヒキで終わった事もあり最終話に期待が高まりますね!「パパのいうことを聞きなさい!」アニメも、残すところわずかに一話。感慨深いものがあります。


準備にはアニメの企画を頂いてから一年以上の期間してきて、放送が始まると三ヶ月があっという間です。少しでも面白くしようと頑張ってくださったスタッフの皆さんの努力が報われて欲しいと願っています。

思えば、前回のアニメ第10話で売れない声優である新子胡桃が「声優の仕事なくなっちゃって」と語っていましたが、実際、声優さんにしてもアニメ製作にしても、我々原作小説を書く立場でもみんな同じ事で、1クールごとに改めて一から新しい作品を作らなければならない立場です。今、仕事があるからといって次も仕事があるとは限らない。昔、ある声優さんの話を聞いていた時に「僕たちは一作品ごと、三ヶ月ごとに失業ですから!」と仰っていたことを思い出します。それはアニメーターさんたちもそうですし、僕たち小説を書いている人間も同じです。

だから、絶対に作品に対して手を抜くなんてことはないと思っています。今の現場で評価されなければ、次の仕事に響きます。僕がつまらない小説を書いてしまったら、次の作品で挽回するのは大変だと思います。みんな必死です。

とはいえ、努力が結果を保証する世界ではありません。面白いと思って作っていても視聴者の皆さんや読者の皆さんにそう思って貰えるとは限りません。だからこそ、悔いのないように持っているものは全部注ぎ込んで頑張りたいと思っています。

アニメは、川崎逸朗監督たちが原作を読んで面白いと思った部分をアニメとして増幅して作られていると思います。読者全てが同じ部分を面白いと思う訳ではないので、色んな意見があるのは当然だと思いますが、できたら、監督たちの「面白い」を視聴者の皆さんにも面白いと思って頂ければいいと思います。

同じように、僕自身が今回は大量のスピンオフの原作を書かせて頂いていますが、これもまた、原作通りにはなっていません。でも、みんな原作の人物達と同じ魂を持ち、同じベクトルを持った物語なんです。媒体によって見え方が変わるのは当然だと思っています。漫画を描いてくださっている漫画家さんたちの個性も、当然あるわけですし。そういう差を楽しんでいくのも、幅広い面白さを感じるきっかけになるのではないかと思っています。さすがに6誌連載は身体を壊しそうになりましたが、完成していく単行本を見てとても幸せな気持ちにもなっています。ぜひ、お手にとって頂ければと思います。

さてアニメ第11話に関してですが、いやー、急展開でしたね。びっくりしました。

実は、ラスト二回はシナリオがもの凄く難航したそうです。アニメとしての落としどころをどうするかだったり、川崎監督や荒川先生が祐太たちに求める答えの形を模索されたそうです。原作では、原作なりの回答をきちんと出したつもりですが、アニメの展開を受ける時、伯母さんや親戚の立ち位置をどう演出していくかという点でプロデューサーの皆さんも含めて大議論の末、現在の展開になったと聞いています。

僕は「基本的に全てお任せします」という立場でしたので、非常にドキドキしながら拝見させて頂きました。僕は、この改変はアリだと思います。原作と同じ作りでは「大人」が描けない、という判断だったのだと思いますし、視点を空にふって回想を重ねた上でモノローグを語らせたりと、監督と荒川先生の工夫と苦心を感じる回でした。この展開からの最終回、緊張して拝見したいと思います。

今回の僕が印象に残ったセリフは、冒頭ですが美羽の「脱いで!」にさせて頂きます。てか、肝を潰しましたよ……何が始まるのかと。でもそれ自体が空が持っている希望と現状を対比させ、今の無理をくっきりと浮かび上がらせる伏線として機能させるとは。アニメスタッフの力量を感じる回でした。

次回、最終回です。寂しさと安堵が入り交じるような複雑な気持ちです。
皆さんにも、最後まで見届けて頂きたいと思います。
そして今回のSSは偶然なのですが、空の気持ちを描くお話になっております。
イラストは「空色の響き」江尻立真先生です。
それでは、最後まで『パパのいうことを聞きなさい!』を宜しくお願い致します!


◇告知・コミカライズ一斉発売記念、春の三姉妹フェア!

3/23日の金曜日は、『パパのいうことを聞きなさい!』のコミカライズ3作品、そしてスピンオフ小説1作品が同時発売です三姉妹のそれぞれをメインにしたコミカライズです。まずはシリーズごとにご紹介させて頂きます。

「パパのいうことを聞きなさい! −空色の響き−」1巻

長女、小鳥遊空がメインのコミカライズはアニメ第10話でも登場した空の所属する中学でのお話。祐太と再会する一年前、中学入学からスタートするお話です。

漫画を担当して頂いたのは、週刊少年ジャンプで大人気だった「P2!」を描かれていた江尻立真先生です。というかですね、普通はコミカライズに参加して頂けるような方ではないので、最初はビクビクしながら打ち合わせしていたのですが、原作を気に入って頂けたようで大変モチベーション高く一緒に頑張って頂いております。お話を聞くと、実はフェイバリットなキャラはひならしいのですが、部活スポ根ものっぽい展開はさすが江尻先生ということで、空が大変頑張り屋の素敵な少女として描いて頂いています。特に三姉妹の両親である信吾と祐理が健在なので、ある意味非常に貴重なスピンオフになっております。

このコミカライズはオリジナルキャラクターが多いのも特徴です。単行本の帯は、なかじまゆか先生が空色の響きオリジナルキャラを描いてくださっています。確認してみてくださいね。


「パパのいうことを聞きなさい! −美羽様のいう通り!−」1巻

次女、美羽のストーリーです。これはアニメのスタートからラストまでを美羽視点から追った正当派スピンオフでありながら、非常に独自性のある面白い漫画に仕上がりました。なんと言っても、少女漫画の本場Cookie様で、たたき上げの少女漫画家である加藤友緒先生が完璧なまでに「少女漫画」として描いてくださったからです。いや、正直にいってびっくりするくらい面白いです。そして少女漫画です。

このCookie版だけは僕が原作をプロットまでしか書いていないということもあるのですが、作品性を大切にしながら女の子の気持ちをしっかりを追いかけてくださっている点は感動ものです。また、仁村のイケメンっぷりも素晴らしいと言いますか……脱帽ものです。真逆の青年誌視点で描かれたYJ版と対比で読むと、イケメンに対する男女の感覚差を実感できてちょっと鬱に……いやいや、まあイケメンになったことはないので祐太の仁村に対する微妙な気持ちが理解できるような気がします。そして単行本巻末には喜多村英梨さんのロングインタビューが! これまた楽しい内容になっていますので、ご購読宜しくお願い致します!


「パパのいうことを聞きなさい! うさぎのまぁく」

三女、ひなの保育園での生活を中心に描いたコミカライズです。MATSUDA98先生の超絶可愛らしい絵柄のおかげで、僕の原作を8割増しくらいに増幅して頂いた素敵な話になっております。特にこのストーリーでは、ひなと家族の関わりや、ひな自身の気持ち、魅力が強く打ち出されていて、理想的な形になったのではないかと思います。

MATSUDA98先生は、元々漫画とイラストの両方で評価の高い方ですが、今回はとにかく何もかも可愛い……そして優しいです。うさぎのまぁくでは保育園の先生達も登場しておりまして、ひなの担任のマサキ先生やナミ先生のキャラクターや人間関係も見所の一つです。うちの息子も保育園に通っており、ちょっとしたネタはまだたくさんストックがあるので、機会があればこのストーリーもまだまだ書き進めたい内容です。

それから、このコミックスでは、パパ聞き!最初のイベントだった神田明神の昇殿参拝をはじめ、MATSUDA98先生が参加してくださった数々のイベントのレポート漫画が収録されています。これまたすべて描き下ろしで本邦初公開! どこにも出てこなかった内容がさらりと書かれている上にしかもこれがまた上手いんです。パパ聞き!だけでなくパパ聞きに登場する声優さんに興味のある方も読んで損のない内容になっていると思いますので、こちらも是非是非チェックしてください。

そしてこの「うさぎのまぁく」には、もう一つ作品が生まれました。

小説版「パパのいうことを聞きなさい! うさぎのまぁく」

「うさぎのまぁく」は僕の描き下ろし原作をもとにMATSUDA98先生が描かれた訳ですが、その漫画と僕の原作を元にして書かれたコバルト文庫の少女小説が誕生しました。ココロ直先生が書いてくださった小説版「うさぎのまぁく」です。漫画版の内容を更に掘り下げていく形で、一言で言って……ひなが可愛いです。僕と全然文体が違うのでイメージは少し変わるかも知れないですが、正直、ちょっと嫉妬するほど可愛いです。

実は、同じ小説ということで多少、不安もあったのですが杞憂でした。ココロ先生、むしろ僕が小説の書き方を習いたいくらいお上手でした。今後の参考にさせて頂くかも知れないです(笑)

なので、僕の作品とは全然テイストの違う少女小説としての『パパのいうことを聞きなさい!』をみなさんにも安心して楽しんで頂ければと思います。MATSUDA98先生のイラストも素晴らしいクオリティですので、お手元において頂ければとても嬉しいです。


更に! 3姉妹のコミックス3冊同時発売を記念してフェアが行われます!

コミックス三冊同時発売記念・「春の3姉妹フェア」! 詳細はこちら

上記3冊のコミックスの帯についている応募券でご応募頂くと、僕(松智洋)、なかじま先生・江尻先生・加藤先生・MATSUDA98先生直筆サイン色紙+特製図書カード(1000円分)が10名様に、更に190名様に特製図書カード(1000円分)が当たる太っ腹なフェアです! 詳しくは「パパのいうことを聞きなさい! ポータル」か、コミックスの帯をご確認頂ければと思います! 宜しくお願い致します!


◇告知・パパのいうことを聞きなさい!BD2巻/DVD1巻 4/11発売! イベント決定!

「パパのいうことを聞きなさい!」Blu-ray2巻購入者対象イベント告知

パパのいうことを聞きなさい!BD1巻、ご購入ありがとうございます! そしてまだ検討中の方、ぜひご購入をお願い致します! なぜなら……これに参加しない手はないからです。 2巻でも改めてイベントが行われることが決定致しました!

2巻をご購入頂いた方の中から抽選で、上坂すみれさん喜多村英梨さん五十嵐裕美さん波多野渉さん登場のトークライブにご参加頂ける事になりました!
ジャンフェス以来のそろい踏みです。こんな機会はなかなかないと思います!

イベントは5月12日に決まっておりますので、発売日からあまり日数がないです。ぜひ予約頂いて、早めに抽選に応募して頂ければと思います。
皆さんの参加を、みんなで待ってますよ!


◇SS第十六回『ひとりの時』

 八王子の小さな六畳間で小鳥遊空、小鳥遊美羽、小鳥遊ひなの三姉妹が暮らし始めてからもう一ヶ月以上が過ぎていた。
 一時間以上かかる通学に、ひなの保育園の送り迎え、更には今までは両親がやってくれてた家事、ひなの身の回りの世話……もちろん、ひなだって姉たちの苦労を察して、自分で出来ることは自分でやろうとしてくれている。でも、それでも彼女は三歳なのだ。
 そして頼るべき叔父、瀬川祐太もとてもとても頑張ってくれていて、空はいつも感謝している。お金の工面を一手に引き受け、いきとどかない面はあるにせよ、身の回りのこともしてくれる。空に普通の大学生がどんな暮らしをするものなのかは分からないけれど、少なくとも、夜の目も寝ずに働いている祐太が普通の生活を維持しているとは思っていない。莱香たちも手伝ってくれるが、それ でも結局のところ、自分たちのことは自分たちでやらなくてはならないのだ。祐太がお金を稼いでくる父親役をするのであれば、空は母親の部分に責任を持つのは自分だと思っている。
 そのために空は、まず自分にひとつだけ課していることがあった。
 誰にも言わないけれど、空は、そのことだけはずっと守っているのだ。

「はあ……」
 大きな溜息をついてしまう。
 空は、やっと泣き止んでくれたひなを抱きしめていた。
「すう……すう……ぐすっ……まま……」
 うとうとし始めたひなの寝顔はとても可愛い。
 だけど、泣いている時のひなは耐えがたいくらいわがままに思える。
 今日泣いたのは、晩ご飯がひなの好きな肉じゃがだったのだが、ママが作ったものと味が違う、というところからママに逢いたい、 そういって泣き出してしまったのだ。
 ひな自身には、わがままを言っているつもりはない。むしろ、よく我慢してくれていると思う。だけど、そうはいっても三歳なのだ。ぐずってしまう時はある。
 不思議と、祐太がいる時にはひなはそういう顔を見せない。
 人数が多いから元気が出るのか、祐太がいる状況だとまだ少し緊張しているからか、それは分からない。だけど、三姉妹だけでいると、時々だけどこうして泣いてしまう。
 そうなると、美羽も空も、傷が癒えている訳ではないので泣き出しそうになるのは止められない。分かっていても、辛いことに変わりはないのだ。
「……ひな、泣き止んだ?」
 少し心配そうな顔をして、美羽がお風呂から出てくる。
「うん……なんとかね」
「ごめんね、お姉ちゃん。私だけお風呂に入っちゃって」
「ううん。いいんだよ。ひなは寝ちゃったし……私も、お風呂に入るね」
「うん、まかせて」
 美羽は、笑顔を作る。空も同じように自分が笑えているか心配しながらほほえんだ。
 ひなの軽い身体を美羽に預けて手早く布団を敷くと、空は後を任せてユニットバスに向かう。
 扉を閉めて……空は息をついた。
 シャワーからお湯が出るのを待つ間に、手早く服を脱いで、空はバスタブに立つ。
 水音が、狭いユニットバスに響くと……空は初めて、大きく息をついた。
 シャワーのお湯が張り詰めた気持ちを溶かしていく。
 そういえば……ひとりでお風呂に入るのは久しぶりだ。
 気づいて、自分でも不思議な気持ちになる。
 以前は、池袋に住んでいた頃は、たいていひとりでお風呂に入っていたのだから。
 激変した環境を再認識して、空は、思わず胸が詰まるのを感じた。
「う……うう……」
 空は、かすかに嗚咽を漏らす。

イラスト:江尻立真
(スピンオフコミック「パパのいうことを聞きなさい! −空色の響き−」)

「お父さん……お母さん……」
 そのつぶやきは、葬儀以来、空が封印している言葉。
 祐太には絶対に聞かせられない。美羽にも、ひなにも。
 だって辛いのはみんな同じなんだから。
 そして空は、無茶を承知で……三姉妹で一緒にいるために大好きな祐太に迷惑をかけることを選んだのだから。私は……泣きたくない。少なくとも、みんなの前では。
 だけど辛くないわけじゃない。
 両親を失った悲しみ。これからへの不安。形にならない思いが、胸を締め付ける。
「……今は、ひとりだから……いいよね」
 空は、そう呟いて歯を食いしばるようにしながら、シャワーの水滴に自分の気持ちを流していく。ほほを伝う水滴は、彼女の流した 涙なのか、シャワーのお湯なのか判別できなかった。
 空が、この狭い六畳間でひとりになれるのは、ここだけなのだ。
 シャワーの音が、空の嗚咽を隠してくれる。
 空はその夜、久しぶりに少しだけ長湯をしたのだった。

 祐太も、空も、美羽も、ひなも、それぞれに少しずつ我慢して日々を送っている。
 だけど、それも限界に近づいていた。
 そしてそのことを、本人達だけでなく、周囲も気づき始めていたのであった……


【バックナンバー】
パパのいうことを聞きなさい!SS第一回 「BOY MEETS GIRLS」
パパのいうことを聞きなさい!SS第二回 「小鳥遊家の約束」
パパのいうことを聞きなさい!SS第三回 「彼女に彼氏がいない訳」
パパのいうことを聞きなさい!SS第四回 「ママとひな」
パパのいうことを聞きなさい!SS第五回 「イケメン無双」
パパのいうことを聞きなさい!SS第六回 「何事も形から?」
パパのいうことを聞きなさい!SS第七回 「美しい羽」
パパのいうことを聞きなさい!SS第八回 「莱香妄想(YJ風)」
パパのいうことを聞きなさい!SS第九回 「初めてのパンチラ」
パパのいうことを聞きなさい!SS第十回 「空ちゃんのアルバイト志願」
パパのいうことを聞きなさい!SS第十一回 「ひなとぬいぐるみ」
パパのいうことを聞きなさい!SS第十二回 「新子胡桃の溜息」
パパのいうことを聞きなさい!SS第十三回 「ファーストコンタクト」
パパのいうことを聞きなさい!SS第十四回 「ひとりでできうもん!」
パパのいうことを聞きなさい!SS番外編 「三姉妹のお願い」
パパのいうことを聞きなさい!SS第十五回 「プールの日」
パパのいうことを聞きなさい!SS第十六回 「ひとりの時」
パパのいうことを聞きなさい!SS第十六回 「ひとりの
パパのいうことを聞きなさい!SS第十七回 「そして始まりの時」
パパのいうことを聞きなさい!SS第十八回 「ゲーム発売記念・お掃除頑張って!」

アニメ『パパ聞き!』放映記念! 松智洋先生インタビュー 前編 / 後編

【関連リンク】
アニメ「パパのいうことを聞きなさい!」公式サイト
パパのいうことを聞きなさい!ポータル
スーパーダッシュ文庫 / 「パパのいうことを聞きなさい!」
PSP「ゲームでも、パパのいうことを聞きなさい!」

◇本文・松智洋
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◇キャラクター原案・なかじまゆか
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◇SS第十六回イラスト・江尻立真
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◇コピーライト
松智洋/なかじまゆか/集英社/PPP


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