【コラム・ネタ・お知らせ】 「妹は僕に手を出すなっ!」木緒なち先生インタビュー

■ツン妹vsデレ妹、双子に迫られる「妹は僕に手を出すなっ!」
―――木緒なち先生は美少女ゲームのシナリオライターとしてご活躍されていますが、この度「妹は僕に手を出すなっ!」【AA】を書かれたのはどういうきっかけでしょうか? 木緒先生と担当編集のサトさんにインタビューをさせて頂きます。
木緒なち先生(以下、木緒):2008年に「さかあがりハリケーン」というゲームを出した後に、もともと知り合いだった編集さんから『小説を書いてみませんか?』と言われまして、スーパー銭湯で『じゃあ妹が双子で、二人出てきてお兄ちゃんを取り合う話はどうですかね』みたいな話をしたら、『それだ!』と決まったのがスタートです(笑)
編集部サト(以下、サト):妹が二人いて、ツンデレのツンな妹とデレな妹で主人公を取り合うという。そう言うとすごくシンプルではあるんですけど、もうイチャイチャがあれば良いじゃないか、様々な作品がある中で、そういう作品があっても良いのでは、ということで生まれたのがこの作品です!
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▼ストーリー
高校生・藤本孝美は、ツンな妹、晶とのこじれた仲に大いに悩んでいた。そんななか、孝美の前に晶と同じ顔をしたデレな妹が現れる。それは、幼い頃に別れた、晶の双子の妹、シズカだった! 同じ顔を持ちながら、かたやツン、かたやデレ!? ややこしい双子からのストレート&ねじ曲がった愛情、誘惑、アレな行為に、孝美の限界値も突破寸前!? ツインズ×ラブコメ開幕!
木緒:まずカバーイラストなんですが、もう見た瞬間に『久坂さんありがとう、これはいい!』と。
―――これはグッときますね! でも何をしているんでしょうか?
木緒:何してるんでしょう(笑)実は左下の部分に小さい文字で、シチュエーションの解説が台詞で入れてあるんです。読む人が楽しんでもらえるような仕掛けをひとつ作っておこうと思いまして。ローマ字でちょっと読みにくいですが、気が向いたら読んで頂けると嬉しいです。
―――カバーになった双子の一人、晶は極端なツンですけど魅力的な子に感じました。
木緒:理由のないツンデレキャラって嫌われますし、僕自身も書いていて気持ちが悪い。読んでいてただむかつくだけになっちゃうんで、ちゃんと晶の心情を丁寧に書くことを心がけました。ただ序盤はちょいキツくなったかもです。
サト:晶のツンは強めですが、そこにはきちんとした理由があり、ツンだからこそ、貴重なデレが魅力的に感じられるのだと思います。しかし、主人公の孝美も晶も不器用なとこは困ったものです。冒頭、トイレのシーンは、読んでいて本当にいたたまれない気分にさせられました(笑)
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シズカ |
―――一方のシズカは金髪で積極的に攻めてくるデレるキャラなのに胸が小さくて、むしろ晶の方が巨乳という。
木緒:積極的に攻めてくるシズカの方が逆に武器が少ないという方が、色々と面白いと思いまして。むしろ巨乳っていうめちゃくちゃ強力な武器を持っている晶の方が、自分の武器の強さをわかってないという(笑)少しネタバレになりますけど、シズカのやりすぎた部分に晶が対抗して、あの○○○の格好をしたところとか、なんでこんなバカな方向に行くんだろうって思われるでしょうが、人間、追い詰められたら必死なんだということをご理解いただければと(笑)
サト:あのシーンは踏み込んだところのおかしさが出てましたね。あと、こちらの都子も踏み込んできた個性的な子なんです。
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都子 |
―――都子は美人なのにシモネタがどぎついという……
木緒:最低ですコイツは!(笑) 今まで自分が作ってきたゲームでは、だいたい品のない悪友の男キャラが一人いるんですけど、今回はその立ち位置を女にして、黒髪ロング・和服美人・茶道部部長なのに中身は正反対という風にしたら、こんなとんでもないキャラになってしまいました。いや、自分では気に入ってるんですが(笑)
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葉月 |
―――その都子にいじられる、茶道部の葉月ちゃんが不憫で。
木緒:僕はアニメでも「まどマギ」ならさやか、「夏待ち」なら柑菜と、青髪のキャラが大好きなんですが、葉月についても愛が行きすぎて、報われない子になっています。髪色もきちんと『青で』という指定にさせていただきました。
一同笑い
―――作中には小ネタが色々と仕込んであって面白かったです。『クマモト』がスワヒリ語で『性行為』を意味するというのは本当ですか?
木緒:ホントです(笑) あれは中島らもさんの「ガダラの豚」【AA】という本に載っているネタを拝借しました。
サト:それと相模中野という晶たちの街は、木緒先生の好きな相模大野がモデルになっています。その近隣に住んでいる編集者から見ると、ご当地ネタが知っている人にはわかりやすく書いてあるそうです。
木緒:カンの良い方だと、舞台になっている学校もすぐわかると思います。 プロフィールにも書いてますが、僕は地図が好きで、モデルとなる舞台を決めたら、地図で下調べしたあとに現地まで行って歩いてみて、どのくらい時間かかるのか、ここにこういうのがあったら面白いなってメモしながら写真を撮って……とイメージを膨らませていくようにしています。「さかあがりハリケーン」もモデルは聖蹟桜ヶ丘をベースにしていまして、今回もそんな感じで相模大野を採り上げました。
■「ひだまりスケッチ」のデザイナーがラノベ作家デビュー!?
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木緒先生がデザインされた「ひだまりスケッチ」ロゴ |
―――ここからは木緒先生の経歴について伺いたいと思います。元々はデザイナーなんですよね?
木緒:はい。以前にゲームメーカーの戯画さんやねこねこソフトさんで仕事をさせていただいて、最初はグラフィックデザインの依頼だったんですけど、そこでディレクター兼任みたいなことをするようになりまして、その流れでシナリオも書かせていただくようになりました。経緯については、(木緒なち - Wikipedia)を参考にして下さい。これ、だいたいあってます(笑)
―――蒼樹うめ先生の『ひだまりスケッチ』のロゴデザインや、単行本のデザインを手がけられた方と聞いて驚きました。
木緒:僕がねこねこソフトさんで仕事をさせていただいていた時に、うめさんがそこでweb4コマ漫画を描かれていたんです。それで『ひだまりスケッチの一巻が出るんですよ』という話を伺った時に、『じゃあ僕がデザインしていいですか』ってお願いしたら、『いいですよ』ってノリノリで答えていただいて、その翌月には芳文社の「まんがタイムきらら」の現編集長さんに会わせていただき、そこからはトントン拍子で進みました。 で、そのコミックスの打ち合わせの際、色々と構図などについて意見させていただいたら、そういう事を面白がってくださって、「じゃあウチの他の単行本もやりませんか?」ということで、いろんなコミックスの装丁もやらせていただくようになりました。
―――また、一迅社文庫さんのデザインもされているとか。なのにGA文庫さんから作家デビューというのもこれまた面白い状況なのですが。
木緒:5年くらい前でしょうか。一迅社さんのコンペで採用していただきまして、(ラノベのレーベルとしては)後発だからこそできる優位性も絶対あると思っていましたので、良いと思う要素は全部入れました。
―――背表紙に絵柄が全くないレーベルも多いんですが、GA文庫さんや一迅社さんはヒロインのイラストがワンポイントで入っていて洗練されている印象です。
木緒:それはMF文庫JさんやGA文庫さんが先にやられていた事なので、じゃあもっと絵の幅を広げようとか、文字の置き方を変えようとか、そういう試行錯誤の上にできたのが今のスタイルです。お陰様でそのあたりも含めて支持していただいて、すごくありがたいと思っています。
■「デザインと原稿の〆切りが重なって大変でした(笑)」
―――今回の「妹は僕に手を出すなっ!」でも、デザインをご自身で手がけられたとか。
サト:普通、作家さんはご自分の原稿をテキストエディタのほか、wordや一太郎で書かれているので、本文を流し込むと違うフォントを使っているので当然ずれるんですよ。そうすると意図した字面と変わることがあり、『何でずれるんですか?』って訊かれるんですけど、そこらへんの説明が一切要らなかったのは早かったです。 あとは、ここで右ページにキャラ紹介を入れたいから、ここの文章を足してこうしましょう、というように、ページ構成でも作家さんがデザインを兼ねている事が役に立ったんですよ。最後の仕上がりイメージを前提として、いろいろご相談できたのは大きいですね。 でもデザインと原稿の〆切りが被ってしまい、『カバー入稿いつまで、後書き入稿、校正のチェックを戻して下さい、全部明日なるはやでお願いします』って言うことが……。
木緒:大変でしたね。通常半分で済むところを全部なので、毎日なにかの〆切りがやってくるみたいな……。まあでも絶対に他の方ができない貴重な経験をさせてもらいました(笑)
―――では最後に、編集さんから本作のセールスポイントと、木緒先生から皆さんにメッセージをお願いします。
サト:ライトノベルのラブコメディでツンデレはたくさんありますけど、これくらいツンとデレに振り切った形は珍しいと思います。それぞれ役割分担でツン100%・デレ100%みたいな双子のヒロインを楽しんでいただければと思います。
木緒:主流になっているいわゆるコメディ、エロ押しだったりする作品と比べると比較的オーソドックスなところに落ち着いているものだとは思うんですけど、その分、キャラを凄く好きになってもらえるように心を込めましたので、長く愛していただければありがたいと思います。
―――ありがとうございました。
取材・文:平和(平和の温故知新@はてな) かーず(かーずSP)
(C)蒼樹うめ/芳文社
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