【かーずSP】 ジャンプからアフタヌーンへ。はねバド!1巻発売の濱田浩輔先生インタビュー

県立北小町高校バドミントン部のコーチになった立花健太郎。部員数が足りず団体戦にも出られない部を立て直せないかと悩む中、運動神経抜群の少女「羽咲綾乃」と出会い、勧誘しようとするも玉砕。なんと彼女は、バドミントンが大嫌いだった。 「はねバド!」ストーリー
■ラブコメもスポーツも青春のひとつの要素
───『はねバド!』を描きはじめるきっかけは、どのようなものでしたか?
濱田浩輔(以下、濱田):前作の「パジャマな彼女。」の連載がちょうどロンドンオリンピックの時期で、バドミントンの準決勝を見ながら「これなら漫画にできるんじゃないか」と思い、アイディアをいろいろと考えてました。『パジャマな彼女。』が連載終了して、専属契約が切れた時、今の担当とお会いする機会があったので最初のネームを見てもらいました。
担当:バドミントンという題材は、野球やサッカーと比べるとメジャースポーツではないので、認知度は低いかもしれないとも思ったのですが、見せていただいた『はねバド!』の原形がネーム、きちんと女の子が描けていたんです。元々『パジャマな彼女。』の一読者だったので、描いてもらうなら女の子が出てくる漫画がいいと思っていましたので、「これは良い!」と思い編集会議にかけて、OKが出たというのが経緯です。
───ラブコメからスポーツ漫画にジャンルを変えての連載ですね。
濱田:スポーツ漫画が描きたいとはずっと思っていたんですが、その前に「青春漫画」が描きたいという気持ちが常にあります。私は小学3年から高校3年までずっとバスケをやっていたので、自分にとっての青春モノというのは絶対に部活が絡んでくるんです。そこには恋愛もあっただろうと思っているので、『パジャマな彼女。』からの大きなジャンル変更というのは、自分の中にはありません。
■「はねバド!」の魅力的なヒロインたちを紹介!
───まずは主役の羽咲綾乃! 一見ぽや〜っとしていて、すぐに親友のエレナに泣きつくくらい気弱な性格。ところが運動神経が抜群で、バドミントンでも才気を発揮します。
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羽咲綾乃 |
濱田:外見は、読者の方が「中学の時好きだった子が、部活をやっていてこんな髪型だったなあ」とか、そういう一見地味な見た目というか、現実にありえそうな感じにしています。性格のモチーフは、実在する天才的なサッカー選手です。その人はサッカーのスタープレイヤーとしては珍しく内向的で、幼少期は誰かが間に入らないと人と会話ができないくらいシャイな方なんですが、そんな彼をモデルにしてます。
───綾乃も、エレナがいないとコミュニケーションが取れないくらいですからね(笑)次に校内でのライバル、荒垣なぎさ。本気でバドミントンにかけていて、ストイックな選手です。

濱田:スポーツの世界では、身体の大きさや手足の長さは努力では覆らない天性の才能で、そういう意味では綾乃よりもなぎさの方が天才と言えるんです。ですが、そういう高身長と体躯に恵まれている子が、いわゆる天才タイプの綾乃にぶつかってしまったときに、それでも悩みながらも努力する人間臭い子が欲しくて、なぎさを登場させました。
───そして綾乃の校外でのライバル、コニー・クリステンセン!

濱田:世界的にバドミントンの強国であるデンマーク出身の、作中で一番綺麗どころの子は絶対に出そうと思ってました(笑)
スポーツにおいては、上手な事とは別に、観客を楽しませることができる「華」がある事も才能だと思っています。スター選手は数字上の記録を淡々と積み上げていく人もいるのですが、コニーはプレイしている最中華やかな瞬間があって、一番観客が楽しむことができる選手にしたいって思っていました。だから「花」っていう単語が作中にも時々登場して、それが本作のテーマの一つにもなっています。
───泉理子。眼鏡でポニーテールが特徴的です。

濱田:単純に可愛いかなっていうくらいで(笑)。自然とこうなりました。見た目が他の子と被らないようにして、理子の優しい性格だと本来はタレ目が似合っていると思うのですが、あえてつり目にしています。
───綾乃の親友である、藤沢エレナと三浦のり子。幼なじみなのに綾乃のバドミントンには不干渉なのが気になります。親友なら、試合があれば応援に行っているのでは?

濱田:作中でこれから語られていきますが、綾乃の家庭環境の問題が一番なんです。綾乃は都合の悪いことは言わないようなところがあって、エレナ(左)はおせっかいのくせに、人が言わないことをあえて無理やり聞き出そうとする子ではない。察し合うことで作られる二人の関係になっています。
───作中で一番おっぱいが大きいのは誰でしょうか?
濱田:メインキャラの中ではなぎさで間違いないんですけど、設定で、おっぱいの大きさは全員決まっているんですよ。
(一同笑い)
担当:一応学生の中では、フレゼリシア女子短大付属高校の矢本千景って言うんですけど、この子が一番大きいです。
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矢本千景 |
濱田:大人も入れると、太郎丸美也子先生が一番でかかったんじゃないかな。えーっと(とノートを見ながら)、美也子先生となぎさはFカップ、コニーはDカップですね。
担当:美也子先生って、『パジャマな彼女。』に出てるんですよ。
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美也子先生 |
───えっ!?……ああ! 天文部の先生と同じ名前! じゃあ『パジャマ』と『はねバド!』は同じ学校だったんですか?
担当:違います、転任してきたんです(笑)
■十代の少女の筋肉が好き!? 濱田先生の意外なフェチとは
───可愛い女の子がたくさん出てきますけど、先生にはフェチってあるんですか?
濱田:『はねバド!』を描いていていろんなフェチズムに目覚めたんですが、ひとつはヒナの日焼け。今までになかった引き出しです。

担当:僕はヒナ推しです! 可愛いじゃないですか(笑) 肌黒くて健康そうだし。女子は健全であるべき!
───もう一つのフェチはなんですか?
濱田:高身長の女の人の二の腕と太ももがいいんです!
(一同笑い)
濱田:背の大きな女子スポーツ選手の二の腕って、一般の女性と雰囲気が違ってくるんですよ。太ももや腹筋もそうなんですが、大人の女性アスリートになるとガチガチの筋肉で膨らむんです。ですが高校生くらいの選手だと体脂肪率を落としすぎず、まだ細い状態を保ちつつ、しかも機能性を備えている時期があるじゃないですか。その時期は十代だけですぐに失われるからこそ、物凄くいい魅力があるのだと思います。子供の引き締まった筋肉みたいなもので、十代のアスリートはたぶん代謝がいいからなんでしょうね。そんなに身体が膨らまないのがいいんです!
■「ジャンプ」から他の雑誌に移籍……当時話題になった真相に迫る!
───『週刊少年ジャンプ』で『パジャマな彼女。』を連載されていた濱田先生が、他の雑誌に移られたというのは大きなニュースでした。
濱田:もともと私が19歳で漫画家を目指した時、「ジャンプ作家」になるのが夢ではなかったんです。当時の『ジャンプ』は大ヒット漫画のイメージが強くて、派手で大人気の漫画だけが載る雑誌だと思っていました。でも当時私が初めて描いた漫画はすごく地味で叙情的な話で、自分は『ジャンプ』の作風とは違うんじゃないかなとは思っていたんです。実は、私は新人賞とかに応募したとこも、受賞したこともないんですよ(笑)。
───ですがその後、『パジャマな彼女。』という魅力的なラブコメを描かれました。
濱田:『パジャマな彼女。』の時、途中で方向がブレまくったんですよね。アンケートを取ることがやっぱり大事ですから、『パジャマな彼女。』も最初は割りと(人気が)取れていましたけど、ちょっとでも崩れると、なんか大きいイベントを入れてグッとアンケートを上げようと、無理にテコ入れしようとしてしまった。そういう中で、漫画を描くための打ち合わせが、アンケートを取るための打ち合わせになっていくのが自分には疑問として残っていて。それが現実なのは勿論わかってますし、絶対に間違いない事なんですけど、それに潰れてしまい描けなくなるくらいなら、描けるうちに『ジャンプ』を出た方がいいと思って決心をしました。
───それでも漫画を描き始めて3年で『ジャンプ』デビューして、2作品も連載というのは並大抵では実現できない事だと思います。
濱田:『ジャンプ』では「伸びるんじゃないか」っていう漫画家に積極的にチャンスをくれるんです。何度も編集会議にネームを出していると、成長期の人が編集者にはわかるんでしょうね。そういう伸びしろのある漫画家を積極的に第一線の戦場に送り込んで、生き残ったらすごく強い兵士になるという、実戦に勝る経験はないという考え方だと自分は思っていますし、それがなければ自分はデビューできなかったので、本当にありがたかった。
───『ジャンプ』の作家さんって、どういう方が多いんですか?
濱田:もちろん自分が知っている限りではありますが、みんなものすごいエネルギーを自分の中に持ってるんです。その人も、漫画も、エネルギッシュでとにかくわかりやすい面白さをもっている。自分はそういう種類の漫画は描けないな、と思いますから、みんな尊敬してます。だから『ジャンプ』で人気の出る漫画は、出した瞬間に「これ人気でそう!」って感じられるキャッチーさが重要になっていますよね。第一印象で面白いものを作る才能が『ジャンプ』では一番問われていて、噛んだ瞬間に味がするものが求められているんだと思います。でも、自分は噛めば噛むほど味が出る作品でも、ちゃんと面白いと思えるものを作ることができれば皆さんに読んでもらえるんじゃないかと思っていましたし、なにより自分がまだまだ漫画を描きたかった。自分の作品を喜んでくれる読者さんが少しでもいるんだったら、今ある環境を変えてでも、全力で挑んでみたかったんです。
───それでは最後に、この記事を読んでいる皆さんへ、メッセージをお願いします。
濱田:『はねバド!』はバドミントンを通した青春モノです。綾乃たち高校生がバドミントンの練習をするシーンや日常生活のシーン全てで、「青春」が描ければと思っています。すでに学校を卒業された読者さんでも「懐かしいな」って思ったりするようなノスタルジーを感じていただければ嬉しいです。
もちろんバドミントンの競技としての魅力も表現しつつ、少女たちの悩みや喜びを描いていこうと思ってますので、ぜひ読んでください。
───本日はありがとうございました。
取材・文:かーず(かーずSP)