【コラム】 ママ好き(望公太)xおさまけ(二丸修一)特別対談!幼なじみのママが絶対に負けないラブコメ対談

※『幼なじみが絶対に負けないラブコメ1〜2』、『娘じゃなくて私(ママ)が好きなの!?』の内容について、面白さを損なわない程度のネタバレを含みます。ご了承ください。

「隣の男の子が惚れていたのは、娘じゃなくて私だった!?嘘でしょぉお!?」。姉の娘を育ててきた女性と、そんな彼女に片思いをしていた少年。長年の想いが爆発する超純愛ラブコメ、開幕!
■「ママ好き」x「おさまけ」記念SSを アキバBlogにて特別公開!
───電撃文庫「娘じゃなくて私(ママ)が好きなの!?」、非常に好評とのことで、おめでとうございます!最近は、人気声優の島﨑信長さんによる熱い感想ツイートも話題になりました。
サムネがおっぱいしか写ってなくて草。
— 島﨑信長(島崎信長) (@nobunaga_s) 2020年1月22日
いや、そこも魅力かもしれないけど、それだけじゃないのよ!! pic.twitter.com/hTNN16CAVe
望公太(以下、望):ありがとうございます。自分としても予想以上に反響が大きくて、本当に驚いています。島﨑さんの感想ツイートは僕も読ませていただて……なんていうか、感想からすごく読み込んでくださってることが伝わってきて、すごく嬉しかったです。もうほんと、恐縮するばかりです。
みやP(“ママ好き”担当編集):島﨑さんは年上ヒロインが好きでファンの間でも有名な方でしたので、そんな方にお褒め頂きとても嬉しく思っております!
───そこで今回は記念対談として、「幼なじみが絶対に負けないラブコメ3」を上梓されたばかりの二丸修一先生にお越しいただきました!
二丸:よろしくお願いします!
───お二人は初対面なんでしょうか?
望:いえ、去年に作家さんが集まる飲み会で知り合ったのが初でしたね。そして最後になぜか一緒に麻雀をすることになって。
二丸:はい。それで今回の対談企画のきっかけになったのは、僕が望さんのツイートに絡んだからなんですよ。
望:あっ!そうだ、忘れてた!(笑)
二丸:『ママ好き』のあらすじが公開された時、「これ、幼なじみのママが絶対に負けないラブコメなんですね」ってツイートでリプライしたんですよ。
望:あのやり取りで僕は勝手に触発されて、『おさまけ』とのコラボSSを書いたんですが、どこにも公表できる場所がなくて(笑)
みやP:それをなんとアキバBlogさんのご厚意で、特別に公開します!
一同:おーっ!(パチパチパチ)
望:あの時の衝動で書いたSSですが、今回やっと表に出せる場をいただけて嬉しいです。
二丸:僕も読ませていただいたんですけど、SSの中で『おさまけ』をすっごい褒めていただいて、もう本当に恐縮です!ありがとうございます!
みやP:ということで特別公開!記事と同じタイトル!「幼なじみのママが絶対負けないラブコメ」


■ヒロインが30オーバーのママで売れるのか… ドラマを匂わせるタイトルで勝負に

───二丸先生がそのツイートをされた時はどういった心境だったんでしょうか?
二丸:もうまず、「娘じゃなくて私(ママ)が好きなの!?」のタイトルのフックが強いことに衝撃を受けましてタイトルとこの表紙で、全部の要素が詰まっているじゃないですか。
望:ええ、このタイトルを思いつかなかったら、僕も出版を諦めていました。だってそりゃ、ヒロインが幼なじみの30オーバーのお母さんなんて、普通だったらライトノベルで売れるわけがない。
二丸:(笑)
望:でも一言でシチュエーションとキャラの関係性を示せるタイトルが思いつけばワンチャンあるぞ!とも思っていました。一瞬でドラマをにじませるタイトルがよく生まれたなって、我ながら驚きます。
二丸:しかも、Webで公開されている試し読みが完璧すぎでしょ!って嫉妬するレベルです。
試し読みはこちらから→娘じゃなくて私(ママ)が好きなの!? | 電撃文庫
二丸:試し読みで区切るタイミングが絶妙すぎて、「んんっ!?OKOK、買って読んでねってことね」みたいな強烈なヒキ。試し読みまで計算して、あそこで綺麗に締めたんですか?
望:はい。『娘じゃなくて私(ママ)が好きなの!?』ってタイトルが思いついた瞬間に、試し読みの部分までが、速攻で構築できたんです。「ここでタイトルを叫んで、試し読みまで終わり」って、分量までパッと思い浮かびました。
二丸:おおっ、すごい!
望:商業的なことも考えると、やっぱり試し読みの段階で十分面白い作品の方が強いので、序盤にも山場を持ってきたかったんですよね。ママが全力で「頑張れ!応援する!」って巧くんを誘わせておいて、「私に告白するんかいっ!」って。タイトル回収の前フリを、丁寧に丁寧に積み上げていく一章の部分、書いていて楽しかったです。
■年の差ラブコメのハードルはあえて下げて、 綾子ママの魅力に注力
望:巧と綾子ママは10年間、お隣同士で過ごしてきたので、幼なじみ関係でもあるんですよ。ずっと昔から見ていた隣の子がいきなり恋愛対象になって、さぁどうなるみたいな。シチュエーションはエロ漫画的ではあるんですけど、それを純愛でやりたかったんです。
二丸:年の差を扱った恋愛ものだと、今までの価値観や負い目・引け目といったハードルの高さをどう扱っていくのか。読み始める前に気になる部分でした。『ママ好き』はハードルをテンポよく解決しつつ、トントントントンと自分の心の中に届いてくる。リズム感がすごい気持ちよくて、読み進める原動力が素晴らしいと感じました。
望:『ママ好き』の年の差カップルで何が揉めるかというと、年下側の両親で一番揉めそうじゃないですか。でも、すでに巧君は自分の両親は説得済みなんですよ。
二丸:そうそう、テンポの良さにビックリしました(笑)
望:綾子ママひとりの魅力を追求した結果、そこで揉めるのは無しでいいよねって判断で、両親の説得ターンはテンポよく済ませたんです。巧の年齢を二十歳にしたのも、未成年にした時のハードルを取り除くためです。それにGA文庫「ちょっぴり年上でも彼女にしてくれますか?」(以下、『年カノ』)の方で、「成人女性と高校生男子が付き合うのはどうなの?」ってテーマは書いていますので。
二丸:結局、最後のハードルって綾子ママの心理的なハードルだけなんですよね。
望:綾子ママを「誰もあなたを止めないんだよ」って状況に放り込んで、「さぁ、どうするママ?」ってシチュエーションが楽しいかなって。
二丸:1巻は綾子ママの外堀をどんどん埋めるお話で、「相手は子供だから」って言い訳ができない。そういう過程で、望先生は綾子ママの心理的な一面にすごく注力されている。ハードルをサクサク超えていくのが気持ちよかったです。
───巧は高いスペックを持つ、理想の男性像です。
望:綾子ママに対する言い訳をどんどん無くしていった結果、巧くんは割とハイスペックなイケメンになってしまいました(笑)。でもまあ、大学生で経済力がない部分が落ち度と言えば落ち度なんですよね。
二丸:シビアな問題ですね。
望:その盛大な落ち度がある分、巧のスペックはどれだけイケメンにしてもいいだろうってことで、性格や人間性、見た目も含めてハイスペックにしました。それでも巧本人はまだ釣り合ってないと自覚していますし、ようやく二人のバランスが取れたと思います。
■服を着ていてもエッチになっちゃう ぎうにうが描く綾子ママ

二丸:それにしても「娘じゃなくて私(ママ)が好きなの!?」のカラーピンナップ、よくOK出ましたね(笑)
みやP:たしかに「電撃文庫でここまでやっていいの?」という話は出たのですが、うまいことチェックをくぐり抜けまして……(笑)
望:(笑) 確かにエッチすぎて、「ホントにこれ大丈夫ですかね?」ってみやPさんに確認したくらいなので。それで湯気を増やしてもらったバージョンも作っていただいたのですが…。
みやP:デザイナーさんに相談して湯気を増やしてもらったのですが、そしたら余計エッチになっちゃって、元に戻したという経緯があります…!ぎうにう先生のイラストって、服を着ててもエッチなんですよ!!!最高ですね!!
(一同笑い)
二丸:僕は53ページの挿絵が好きです。この一枚で作品全体を語っている、素晴らしい挿絵だなって。

望:僕も同じく、この挿絵が大のお気に入りです。『ママ好き』のすべてが説明できるくらい、ストーリー性が一発で伝わってくる感じがいいんですよ。
みやP:「娘じゃなくて私(ママ)が好きなの!?」のイラスト:ぎうにうさんは、一枚の絵からストーリーを感じさせるのが上手な方なんですよね!1巻最後のモノクロ挿絵でも、背景の映画のポスターが二人の関係を示していてドラマを感じさせます。そういった細かいアイディアも、ぎうにうさんの発案で描いてくださってます。

■クロがテレ押ししてる 1巻の表紙とタイトルのキャッチーさ
───次に『幼なじみが絶対に負けないラブコメ』の話題に移ります。望先生が『おさまけ』を読まれた感想はいかがでしたか?

幼なじみの志田黒羽は俺のことが好きらしい……でも俺には、初恋の美少女で学園のアイドル、芥見賞受賞の現役女子高生作家、可知白草がいる!ところが白草に彼氏ができたと聞き、俺の人生は急転直下。失意に沈む俺に黒羽が囁く――そんなに辛いなら、最高の復讐をしてあげようよ――
望:『ママ好き』で言ってもらった言葉をそのまま返すようなんですけど、このタイトルと表紙が完璧ですよね。「幼なじみが絶対に負けない」って言われた瞬間に「おおっ!」って強い意思を感じますし、世間一般にある「幼なじみ=負けヒロイン」のイメージを覆す!って決意が伝わってきます。
二丸:『おさまけ』のタイトルが出てくるまで本当にぐるぐる迷った挙げ句、ネットで「幼なじみ」を検索したら、「幼なじみ 負けフラグ」ってサジェストが優先度がかなり高いところに出てきて(笑)
望:幼なじみに歴史あり、ですね(笑)。これまで「幼なじみ=負け」のイメージがみんなの中で醸成されたところに、「幼なじみが負けない」ラノベが出てきたのがインパクト大きかったんじゃないかな。
二丸:そういうタイミングも味方したのかなって。タイトルは本当にずーっと最後まで苦しんで、悩んで、突然降ってきました。
みやP:表紙イラストも、末晴くんの表情でヒロインとの関係性が出ているのが刺さりますね。クロちゃん(志田 黒羽)の挑発的な表情も可愛くて、ちょっとあざとくて可愛い感じがたまらないっすね〜〜〜〜!!!
望:そうそう。向かい合っている幼なじみが、主人公に対して積極的に向かっている構図がいい!この一枚絵から「あ、この幼なじみは負けなさそうだ」って感じがビシビシ伝わってきます。
二丸:僕は「テレ押し」って呼んでるんですけど、ラブコメ漫画でもたまに出てくる、女の子がテレているのに「覚悟しときなさいよ!」って迫る表情が大好きなんです。「五等分の花嫁」を読まれている方には、中野二乃の二度目の告白といえば「そういう事か」って伝わるんじゃないかと思うんですけど。そうした女の子のテレ押しを、しぐれういさんが見事に表紙で表現してくださいました。
■令和の幼なじみは、絶対に負けないヒロインになる!
───去年公開されたYouTubeのPV、シロ(可知 白草)とクロ(志田 黒羽)のバチバチが楽しいです。
二丸:もう本当に、素晴らしい紹介動画を作っていただいてありがとうございます。声優さんもすごい方々に声を当てていただいて、内容もヒロインレースを煽りつつ、みんなの注目を浴びるようにして作っていただきました。
───最新刊の3巻ではクロのライバルであるシロが表紙を飾りました。こちらについてはいかがですか?

右:可知 白草(かち しろくさ)、愛称は「シロ」
二丸: 3巻の表紙を白草にすることは早い段階で編集さんとも合意が取れていました。この作品はダブルヒロインと決めていたので、1巻2巻と黒羽を表紙に持ってきた以上、3巻は白草だと。あらすじにもありますが、『逆襲の白草』が3巻のテーマだったので(笑)
───帯に『冴えない彼女の育てかた』の英梨々がコメントしていることも、Twitterで話題となりました。
二丸:表紙が決まった後に推薦コメントを見たのですが、シリアスに抱き合っているからこそ「女子高生作家なんかに〜」というセリフとのギャップが面白く、秀逸だなと(笑) ホント、偶然なんですけど!(笑) 『おさまけ』はコメディの部分や青春感にも力を入れているので、見た瞬間笑えてくるアイデアを代表とした『とにかく楽しいぞ!』って雰囲気の広報と相性がよいと感じています。
今回の帯のコラボは最高に面白い形で提供できたかなって思っています。アイデアを持ちかけて実現してくれた電撃の編集部や宣伝部、そしてコメントをくださった丸戸史明先生や深崎暮人先生に感謝しています。
あと、「幼なじみが絶対に負けないラブコメ」3巻のカラーは黒羽、白草、真理愛の水着や私服のピンナップがあるので見てください!挿絵も水着がありますよ!読者の期待を裏切ってはいけないという使命感がありましたので!(笑)
黒川(“おさまけ”担当編集):「幼なじみが絶対に負けないラブコメ」1巻のカラーピンナップでも、シロとクロを対比にして「ダブルヒロインですよ」って作品の軸を見せています。

望:「こんなに魅力的な幼なじみを振ってまで、この子がいい」と思わせるには、シロが相当いい女じゃないといけない。従来のテンプレから外れたダブルヒロインも魅力ですよね。
───具体的にはどういった点でしょうか?
望:普通のラブコメだったら、1巻は黒髪ストレートのシロがメインヒロインとして表紙を飾りそうじゃないですか。そして幼なじみはカラーページに出てくるパターンが多い。でも『おさまけ』はメタ的に逆転した形になっていて、斬新さを持ちつつ、お約束はちゃんとお約束として押さえています。
───なるほど、キャラ配置が新鮮です。
望:物語もそうです。『ママ好き』はベタベタな定番を追求した作品なんですけど、『おさまけ』は逆に、何が起こるかわからない展開になっている。それこそ1巻の冒頭で、まず幼なじみが振られているところから始まるのが、ラブコメとして目新しいじゃないですか。
みやP:確かに。振られた後のクロが、可愛い一面をバンバン見せてくるんですよね。
二丸:『幼なじみが絶対に負けないラブコメ』ってタイトルを付けた瞬間から、クロの可愛らしさは絶対の命題だったので、そこは死ぬ気で押さなきゃなって(笑)。「こんな攻め方をされたら、自分だったらオチないはずがない」って理想に加えて、クロの立場も考えています。あの子は頭がいいので、末晴の心を読んだ上で、何が一番効果的なのかを計算してやっている面があるんです。
望:クロは末晴を落とそうと思って、積極的に動いていますよね。
二丸:ええ。なのでクロ自身が、あえて都合のいい女の子を演じてる部分もあるんです。女が男にとって都合のいい行動を取るのは、現実の恋愛でもあることですから。そこはリアリティに繋がります。
みやP:なんてしたたかな子!
二丸:クロの強みは、プライドを一回隅っこに置いておけるところです。今まで幼なじみが負けてきたのは、「自分が一番、主人公に近い」ってプライドや、自分のポジションを守ろうとしたから。そうしたプライドや常識をいったん脇に置いて、「今、負けるわけにはいかない!」って行動できることがクロの強さに繋がっています。
望:従来の幼なじみヒロインは、ライバルが現れないと動かなかったんですよね。ライバルの美人が動いたから便乗して私もって子が多かった。でもクロは率先して自分一人で行動する。令和のニュー幼なじみってこんなに強いのか。
二丸:令和の幼なじみは絶対負けない(笑)。
■参観日に来る友達のお母さんが、すごい美人に見える理論
───『おさまけ』の本編で気になったイラストはどこでしょうか?
望:ミニスカ和服のクロってストーリーに関係なくて、別にメイド服でもよかったのに和服にしたってことは、二丸先生の性癖なんですか?

二丸:本能の赴くままに、無意識に出てました(笑)。この前のシーンが特に重かったこともあって、サービスも入れなきゃってラブコメの使命感です。
───フェチ要素でいうと、『ママ好き』で巧くん10歳の時に、綾子ママとお風呂に入ったシーンはドキドキしました。

二丸:あれで性癖が曲がっちゃうパターンですよね(笑)
望:そうそう、10歳だと多分上しか見てないんです。下はまだあまり興味がないお年頃なので(笑)。隣のお母さんをヒロインに据えた時点で、ちっちゃい頃、一緒にお風呂に入ってなかったら、このヒロインにした意味がありませんから。一緒にお風呂に入ったことのない隣のお母さんは、隣のお母さんではない!
二丸:大事なことだから二回言った!(笑)
───血縁のお母さんじゃなくて隣家のママっていう、恋愛対象になるギリギリのラインを攻めているのが上手いと感じます。
望:僕の趣味として、実母はなんかちょっと違うんですよね……。
───なるほど……って、周りの人たちが失笑しているんですけど!
望:僕、一般的なことを言ってますよね?(笑)。実母も実姉もなんか違うなあ〜って。まああくまで僕個人の好みなのですが。自分のお母さんは綺麗に見えないけど、保育園とか小学校の参観日に来る友達のお母さんって、すごい美人に見えるじゃないですか。あの理論です。
二丸:あーっ!わかります(笑)
望:あと義母であったとしても、お父さんの存在がノイズになってしまうなーと。
みやP:男性を出さずに、ママって言い張れる塩梅を探りました!
■「クロ派?シロ派?」 ヒロインレースで盛り上がるのも楽しみの一つ
───ラブコメの創作論として、ここは書きやすい、ここが難しいみたいなところはありますか?
望:望公太の創作物が完全に『年カノ』以前と以降で分離していて、今は1対1ラブコメを執筆することが楽しくて仕方がないですね。もう出版社のお金で同人書いてるような気分なので、こんな楽しいことしてていいのかなー?って(笑)
二丸:ラノベ作家の理想です、素晴らしい!
望:年上ヒロインに色んな服を着せた絵を、好きなイラストレーターさんに描いてもらう。もう思いっきり趣味に走っています。なので、趣味性が強い=客観性がなくなることが難しさかな。それは担当編集さんに客観的なジャッジを取っていただく形です。
二丸:僕の場合は、ファンタジーやSFと比べてラブコメは空気感を出すことに非常に苦労します。幼なじみでも同級生か年上か年下か、主人公の性格をどうするか、親友はどうするか……ラブコメを書くにあたって、一番最初のメインメンバーを確定させるまでは、すごく苦しむんです。でも一度グループ内に空気感ができてくると、その中にお題を投げるだけなので、楽になっていきます。例えば3巻の特典で掌編を書いた時も、1日で3本とか平気でポポン!と書き上げられましたし。
望:「異能バトルは日常系のなかで」もそうだったんですが、魅力的なグループを作ったら、もう勝ちですよね。
二丸:そうですよね。だからこそ、そこが一番悩む部分です。
望:いわゆるハーレムジャンルって、終盤まで誰とも付き合っちゃいけない空気があるじゃないですか。言ってしまえば、『誰と付き合うか』が物語としての終着点なので。だから主人公が鈍感とか、誰か一人特定の想い人がいるとかして、ヘイトを溜めずに関係を維持する必要があると思うんです。1対1のラブコメを書くようになって、そこから解放されたのが楽ですね。あ、もう主人公を鈍感にしなくていいんだって(笑)
二丸:主人公にヘイトを溜めさせないように配慮するのも、ラブコメの難しさですね。
望:ええ。ラノベ主人公が鈍感だと指摘されることがあるのも、そこが理由かなと思っていまして。幼なじみが「負けヒロイン」と呼ばれて、どこかかわいそうな目で見られてしまうのは、長年片想いしているのに、主人公が鈍感なせいで最後の最後まで気づいてもらえない点があったんじゃないかって思うんです。後から登場したヒロインが魅力を振りまいたあとに、「もう遅いよ」ってタイミングで告白して負けてしまう。最初に告っていれば勝てたのに……っていう。
───距離が近すぎて、幼なじみ関係だと動けない部分もありますよね。
望:でも『おさまけ』はすでに、クロの好意が主人公に伝わっています。だからクロは可哀想じゃないし、主人公も不誠実なヤツに見えない。すごく絶妙なバランスで関係が成り立っている。
二丸:末晴をただの鈍感な主人公にはしたくないので、そこはいろんな展開を考えています。
───末晴について、2巻の後書きで「一、二世代前の主人公像になっている」と書かれていました。
二丸:今はストレスがかからない、最善の行動を取る主人公が人気だと感じているんです。RTA(※)の影響もあるのかな?って勝手に分析しているんですけど。僕もRTA動画が大好きで、最適を目指すプレイは見ていてストレスがかからないから気持ちいいんですよね。
※RTA=リアルタイムアタック。ゲームで最短記録を出すプレイングのこと。
二丸:それに対して末晴は、ちょっとおバカでミスもする主人公なので、今の王道から外しているんじゃないかなって。
望:ん〜僕としては、末晴は王道の男らしい、いい主人公だなって。むしろ主人公は王道の範疇で、ストーリーの方が、さっき話したように良い意味で王道ではないと感じました。
───読者もやきもきしながら読み続けることになりますね。
二丸:ラブコメニストの僕にとっては、それもまた楽しみの一つです(笑)。ラブコメ作品で、誰が勝つかを話し合ったりするのが大好きな人間なので。
望:ラブコメの魅力の一つですよね、ヒロインレースって。
二丸:そうそう、バトルものだと「誰が最強か」って話で盛り上がるじゃないですか。同じようにラブコメでも「俺クロ派、お前シロ好きなの?」ってワイワイ話すのが楽しいんです。今はSNSで賑やかに語ってもらうことが、口コミに繋がるところがありますし。自分自身も、他のラブコメ作品でヒロインレースを楽しみにしている読者でもあります。そうした楽しみを『おさまけ』でもしていただけたら嬉しいですね。
■「10代の頃から年上の綺麗なお姉さんが大好き」 望公太の読書遍歴
───普段からラブコメを読まれているとのことですが、昔からですか?
二丸:昔の名作『きまぐれオレンジロード』や『タッチ』は世代ではないんですけど、後から買い集めていったり、ずーっとラブコメを読み続けています。
望:僕も少女マンガの話題作は読んでます。河原和音先生が好きで、『俺物語』『素敵な彼氏』『高校デビュー』ほか、全部好きですね。『俺物語』の誰も悪者がいない世界観は、『ママすき』も知らないうちに影響を受けている部分がある気がします。ライバルやヒロインを苦しめる露骨にイヤなヤツといった要素は抜かして、良い人だけの優しい世界にすることを心がけていますから。
───そこにストレスはかけないんですね。
望:僕が常々思ってるのが、「人間って良いヤツほど面倒くさい」ってことなんです。悪意には悪意で返せばいいから、ある意味で対処がしやすい。でも善意を向けられて迷惑だった時って、「どうしたらいいんだ」と悩むことってありませんか?だから敵や悪役を出さなくても物語は作れますし、面白くなると思っています。
二丸:僕は姉の影響で、『ここはグリーン・ウッド』『っポイ!』といった少女マンガを嗜んできました。『ハチミツとクローバー』の青春感は自分自身でも吸収した部分です。『おさまけ』の「みんなでワイワイやろうぜ!」ってノリは、『ハチクロ』の青春感が無意識のうちに滲み出ているのかもしれません。
───お二人が今、注目しているラブコメマンガは?
二丸:『五等分の花嫁』と『かぐや様は告らせたい』はマストで、『その着せ替え人形(ビスク・ドール)は恋をする』や、『渡くんの××が崩壊寸前』にも注目しています。
望:僕が今一番熱いのは『ジャングルはいつもハレのちグゥ』を描かれていた金田一蓮十郎先生の『ラララ』ってマンガです。金田一先生のラブコメはすべて面白いんですけど、『ラララ』が個人的に一番面白い。超面倒くさい年上女性にだんだん主人公が惚れていくお話です。他には『落日のパトス』ってちょっとエッチな漫画があるんですが、艶々先生の作品には全般的にミステリアスな熟女が登場するのが好みです。
───さすが、年上ばかりですね(笑) ラブコメ以外で好きな作品はなんでしょうか?
二丸:高校の頃に小説『銀河英雄伝説』にハマりました。ラノベの賞に投稿していた時期も戦記物で応募していたくらいです。マンガでも『銀河戦国群雄伝ライ』が大好きで、歴史系も大好きで。今熱いのは『アオアシ』です。
望:僕も『アオアシ』大好きです。面白いですよね。自分がこの世で一番好きな漫画が『GetBackers』。もう死ぬほど好きで、僕が厨二病を発症してた頃にドハマリしていました。冗談じゃなく保存用・布教用・観賞用を買っていて、DVD、ドラマCDももちろん揃えています。ヘヴンさんって年齢不詳のお姉さんがめっちゃ好きでしたねー。
───セクシーな美女でした。
望:あとは『いちご100%』で同級生たちが東西南北(ヒロインたちの名前に、それぞれ東西南北の文字が入っている)で盛り上がってる中、僕一人だけが黒川栞先生推しで、みんなから異端扱いされるという(笑)
二丸:昔から、年上ヒロインがお好きだったんですか?
望:はい、10代の頃からずっと「年上の綺麗なお姉さん」が大好きです。年上ヒロインだからこそ持ってる「母性」みたいな部分も好きなんですけど……もっと好きなのは、年上なのに情けない一面を見せてしまって恥ずかしがってるような部分です。
二丸:まさに綾子ママ!
望:そう。いい歳してるのに、可愛いことをしてしまう。そのギャップに萌えるんです。
二丸:主人公をリードするお姉さんタイプではなく?
望:リードする方も嫌いでは……むしろ全然大好きなんですけど(笑)。ただまあ、世間では『年上ヒロイン=母性』みたいに語られることが多いので、そういう意見を見かけるたび「いやいや年上の魅力は母性だけじゃねえぞ」って内心では思ってます。
■美少女ゲームといえば姉もの?妹もの?
───望先生を掘ると無限にお姉さんキャラが湧いてきますね(笑)。二丸先生はいかがですか?
二丸:美少女ゲームはたくさんプレイしてきました。
みやP:そんな二丸さんの好きな美少女ゲーム、3本挙げるとしたら何ですか?
二丸:3本だけですか!?10本以上挙げたいんですけど(笑)。初めてプレイしたのは『Piaキャロットへようこそ 2』です。それからelfの『同級生』からLeaf『WHITE ALBUM2』くらいまでの主要な美少女ゲームはほとんど経験しています。
みやP:あーっ(笑)!
望:なんでみやPさん、女性なのに分かるんです?(笑)
みやP:私、月末金曜日に買いに行っちゃうぐらい美少女ゲームが好きなんで(笑)
───『アマガミ』や『キミキス』などコンシューマーはどうですか?
二丸:プレイ済みです。ビジュアルノベルが大好きだったので『久遠の絆』とか、『エクソダスギルティー』とか、マイナーな作品まで遊んでいました。さらにマニアックな話をすると、『ツインビーPARADISE』が好きだったんですけど……ついてこれてます、みなさん?
一同:………。
二丸:ヒロインのパステルって女の子が、主人公と同級生なのに「お兄ちゃん」って呼ぶんですよ。あれが大好きで、『おさまけ』のクロは逆に、同級生にもかかわらず姉ぶっていたり。
───声優が椎名へきるさんですよね、懐かしい。望先生はどうですか?
望:僕は美少女ゲームってあまりやってこなかったんですよねぇ。でもアトリエかぐやさんのゲームはプレイしていました。
二丸:やっぱり年上のお姉さんブランド(笑)
望:安心のアトリエかぐやです!
二丸:僕は逆に姉ゲーが苦手なんですよ。『おさまけ』のクロで、姉系ヒロインを初めて書いたかも。
みやP:お姉さんがいらっしゃるとか?
二丸:はい、三人姉弟の末っ子長男で、もう完全にリアル姉のインパクトが強いんで。
望:そりゃ無理だよね。僕は逆に、妹がいるから妹ものが苦手なんです。
一同:ああーっ!(笑)
■「ママ好き」待望の2巻が4月に発売決定! カバーイラストも初公開!
───『ママ好き』、これからの意気込みをお聞かせください。
望:『ママ好き』は一点突破なので、飽きられないように頑張れたらいいですね。綾子さんと巧くんが付き合った後の話も書きたいです。
二丸:むしろ付き合った後も長く読みたいです。
みやP:「エロマンガ先生」で紗霧と正宗が付き合ってからも、多くの人がラブコメとして喜んでもらえていますし!ぜひ長く続いてお届けしたいです!
望:往年のラブコメで常々思うのは、一番面白いのは付き合った後なのに、なんで両想いになったところで終わっちゃうのかなって。『年カノ』もそうですが、ラブコメは付き合ってからも楽しいことが一杯あるよって部分を執筆していきたいです。
みやP:そしてお待たせしました!『娘じゃなくて私(ママ)が好きなの!?』待望の2巻ですが、4月発売予定です!
みやP:今回はカバーイラストもここで初公開しちゃいます!

みやP:ほうきとスカートがお仕事してるーーーーー!!!絶賛原稿山場ですので、あらすじなどは近日発表予定!ですのでお楽しみに!!!
望:あと実は、GA文庫の方ではもう一つ新作を『ママ好き』2巻と同じ4月に発売します。
みやP:おお、まさかそっちも……!?
望:『きみって私のこと好きなんでしょ?とりあえずお試しで付き合ってみる?』というタイトルで、一歳年上のヒロインとの1対1ラブコメです。どんどんヒロインの年齢あげてきちゃってるので、ここらで一回落ち着いて『年上』という属性に向き合おうかなあ、と。『年カノ』は最新5巻が2月に出ますので、付き合ってからの二人がどういう楽しいことをしてるのかは、こちらもチェックしていただければなあ、と。
───発売されたばかりの『おさまけ』3巻です。改めて注目してほしい箇所などありますか?
二丸: 今回は『逆襲の白草』がテーマだったので、白草の挙動に注目してもらえれば、と。あとはその『関係性』ですね。今回はド青春のコメディ性が強い巻となっていますが、末晴が黒羽、白草、真理愛との関係を見つめ直す巻ともなっています。そこを楽しんで読んでもらえたら幸いです。また個人的には四章最後の『毒』が最も力を入れ、そして同時に今作に入れるか編集と相談した部分なのですが、ここを楽しんでもらえたり、もだえてもらえたりしたら言うことないですね。
───本日はありがとうございました!
取材・文:かーずSP
(2020年1月、ストレートエッジにて)
電撃オンライン-『おさまけ』二丸修一先生と『ママ好き』望公太先生のスペシャル対談
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【関連リンク】
アスキー・メディアワークス / 電撃文庫 / 編集部ブログ / Twitter
「娘じゃなくて私が好きなの!?」書籍情報(試し読みあり)
著:望公太氏のTwitter
イラスト:ぎうにう氏のブログ / Twitter / pixiv
望公太 - Wikipedia
「幼なじみが絶対に負けないラブコメ」1巻 / 2巻 / 3巻書籍情報
「幼なじみが絶対に負けないラブコメ」特設ページ
水瀬いのり×佐倉綾音が競演!「幼なじみが絶対に負けないラブコメ」PV - YouTube
著:二丸修一氏のブログ / Twitter
イラスト:しぐれうい氏のTwitter / pixiv / pixivFANBOX / Tumblr
しぐれうい - Wikipedia